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…………理屈では分かってる、だけど気持ちが追い付かないのね。
でも、大丈夫よ。
だって、私の英海はどんな時でも英海のままでいてくれるから。
『お姉ちゃん、不安にさせてごめんね。英海の事は心配しないで』
『ん……でも……』
『あのね、私は黄泉に、お姉ちゃんに会う為だけにやってきたの』
『うん、うん……! 嬉しいよ、本当によく来てくれたと感謝してる』
『私も……来て良かった、会えてすごくすごく幸せだよ。それでね……どうして急にお姉ちゃんに会いに来たかと言うとね、英海が私にそう言ったのよ。私の過去の話をした時、”今からでもお姉さんに会いに逝ったら良い。会って、好きの気持ちを伝えてきたら良い” って、彼が私の背中を押したの』
『……え……? 英海さんが……?』
『そうよ、英海が言ったの。それと、私が黄泉にいる間、あの子は一度も連絡をしてこなかった。今回仕事でピンチになっても頑なに連絡しないの。英海はね、今頃私が幸せな時間を過ごしてるだろうから、私の意思で戻って来るまで待っているって視守ってくれてるの。それだけじゃない、私に心配をかけたくないから仕事の事も内緒にしてくれって……まわりの人に口止めしてたのよ』
『………………』
『英海はそういう子なの。だから、私が決めた事だと言えばそれを尊重してくれる、……うな、だけど誤解をしないでね。英海のそういう所がありがたいけど、だからと言って、お姉ちゃんはチガウとかそういう話じゃないの。これまでの経緯とか、それぞれの性格とか、色んな事が重なっての考えだもの。私はね、お姉ちゃんにそこまで思ってもらえて嬉しいんだ。だから大丈夫、英海は話せば分かってくれる、……それに、私が黄泉で暮らしたからって永遠に会えない訳じゃない。いつか、遠い未来に英海の命が終わった後は、あの子も黄泉に来るんだもの。それまでチョッピリ離れるだけだにゃ』
英海には淋しい思いをさせてしまうわね……本当にごめんなさい。
でも、これだけは信じて。
好きの気持ちは離れたって変わらない、私は英海が大好きよ。
お姉ちゃんは私の話になんとも言えない顔をした。
数度目かの沈黙……ハッカチョ族もハムの小雪も視守る中で、お姉ちゃんは顔を上げ静かに声を発したの。
それはまるで独り言のようだった。
私に向けて言ったのか、それとも、自分自身に言ったのかは曖昧だけど、
『…………そっか……英海さんはそういう方なんだね……そっかぁ……私……敵いそうにないや……』
そう呟いたんだ。
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