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____英海さんには敵いそうにない、
そう呟いたお姉ちゃんは、土の上にペタリと座り込んでしまった。
腕もダラリと下げたまま揺れる稲穂を視つめてる。
涙の跡で頬がカピカピしてるけど……今はもう泣いてはいない。
『……小雪、』
お姉ちゃんが私を呼んだ。
こちらを向いたその顔は、赤い目をして、だけどどこか穏やかだった。
『……なぁに?』
私が一言答えると、お姉ちゃんは背中を丸めて顔を近付けこう言った。
『……小雪は現世にいて幸せ?』
『うな、……とっても幸せよ』
『そっか……良かった。英海さん、優しそうだもんね』
『そうね、優しさしかない子だわ』
『猫好き?』
『猫好きなんてモンじゃない。お姉ちゃんとおんなじで ”猫廃人”よ』
『猫に関してちゃんと知識を持ってる? 食べたらいけない物とか知ってる?』
『お姉ちゃんと同じくらい知ってるし、食べ物には厳しいわね』
『疲れていても遊んでくれる?』
『お姉ちゃんと同じよ。どんなに疲れていても遊んでくれるわ』
『反対に小雪が眠い時はそっとしておいてくれる?』
『ええ、もちろん。私が起きるまで撫でないし静かにしてくれる。これもお姉ちゃんとおんなじ』
と、ここまで話すとお姉ちゃんは言葉を止めてポカンとした。
だけどその後口元をモゴモゴさせたと思ったら、
『…………ぷはっ! なにそれ、ぜんぶ私と同じなの?』
吹き出して、歯を視せながら笑ったの。
お姉ちゃんはまた泣いちゃって、でも、指で涙を拭いながら笑ってる。
私はそれが嬉しくて、一緒になって笑ってしまった。
お姉ちゃんが笑ってくれると私も嬉しい。
英海が笑ってもやっぱり嬉しい。
どっちが好きとか順番なんか決められないよ。
私は、フタリ共大好きなんだ。
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