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ひとしきり笑った後。
お姉ちゃんはポツリポツリと話してくれた。
『小雪、ごめんね。お姉ちゃん、自分の事しか考えていなかった。小雪の気持ちを第一に考えないといけないのにね』
ううん、ううん、そんな事ないよ。
『お姉ちゃん、小雪と離れたくないって、そればっかり考えて……ん……違うな。それもあるけど……なんて言ったらいいのかな……ん……負い目、なのかなぁ。小雪の事を忘れちゃって、そのせいで小雪に辛い思いをさせて、それがね、心の中で棘みたいにささってたんだ』
そんな事は気にしなくて良いのに。
だって、忘れた理由は、私の事を心の底から愛してくれていたからだもの。
今となってはぜんぜん気にしていないのよ。
『小雪の尻尾は3本で、スゴイ猫ちゃんになったんだよね。黄泉と現世を自由に行き来できると聞いてビックリした。……それが出来ればハッカチョちゃんの言う通り、行ったり来たりでいつでも会えると理屈の上では分かってたんだ。でも、……これでまた現世に行ってしまったら、やっぱり英海さんの方が良いとか、それか小雪が戻ろうと思っても、英海さんが納得しないと思ったの。小雪を忘れたお姉ちゃんなんて飼い主失格だって、戻してくれないんじゃないかって。それが怖かったんだ』
怖がる事ないのに。
たとえ天と地が引っくり返っても、英海は絶対にそんな事を言わない。
『でもね、小雪から英海さんの話を聞いて恥ずかしくなったの。まさか、英海さんの方から黄泉に逝く事を勧たなんて夢にも思わなかったから。……それだけじゃない、なにもかも小雪優先だよね。英海さんは自分が辛くなったとしても、小雪の気持ちが一番なんだ。話を聞いて、それがよく分かった』
お姉ちゃん……英海はそういう子なの、分かってくれて嬉しいよ。
もしも、お姉ちゃんが英海の事を疎ましく思ったら……それがなにより悲しいの。
『小雪、ごめんね。お姉ちゃん、自分の事ばっかりだったね。小雪の方が辛いのに、お姉ちゃんの所にいるって言ってくれて嬉しかった。小雪は昔とちっとも変ってないね。優しい仔、思いやりがあって賢い仔、お姉ちゃんの自慢の娘……小雪、小雪……大好きよ、大事で大事で仕方がないよ。お姉ちゃんと同じくらい……英海さんも、小雪の事を大事に想ってくれてるんだよね』
その通りよ。
お姉ちゃんも英海も、同じくらいに私を深く愛してくれる。
そして私も同じくらいに愛してる。
『…………小雪、現世に行っても、またお姉ちゃんに会いに来てくれるんでしょう?』
もちろん、もちろんだわ……!
『…………ありがとう、……ん、ありがとね。小雪、現世に行ったら英海さんに伝えてくれる? ”小雪の事をどうぞよろしくお願いします” って。それと…………”いつか、ずっと先の未来にお会い出来る事を楽しみにしています” とも』
…………うな……うな……お姉ちゃん、ありがとう。
伝えるわ、
お姉ちゃんの言葉、必ず英海に伝えるからね。
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