第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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…… ………… ……………… ひとしきり笑った後。 お姉ちゃんはポツリポツリと話してくれた。 『小雪、ごめんね。お姉ちゃん、自分の事しか考えていなかった。小雪の気持ちを第一に考えないといけないのにね』 ううん、ううん、そんな事ないよ。 『お姉ちゃん、小雪と離れたくないって、そればっかり考えて……ん……違うな。それもあるけど……なんて言ったらいいのかな……ん……負い目、なのかなぁ。小雪の事を忘れちゃって、そのせいで小雪に辛い思いをさせて、それがね、心の中で棘みたいにささってたんだ』 そんな事は気にしなくて良いのに。 だって、忘れた理由は、私の事を心の底から愛してくれていたからだもの。 今となってはぜんぜん気にしていないのよ。 『小雪の尻尾は3本で、スゴイ猫ちゃんになったんだよね。黄泉と現世を自由に行き来できると聞いてビックリした。……それが出来ればハッカチョちゃんの言う通り、行ったり来たりでいつでも会えると理屈の上では分かってたんだ。でも、……これでまた現世に行ってしまったら、やっぱり英海(ひでみ)さんの方が良いとか、それか小雪が戻ろうと思っても、英海(ひでみ)さんが納得しないと思ったの。小雪を忘れたお姉ちゃんなんて飼い主失格だって、戻してくれないんじゃないかって。それが怖かったんだ』 怖がる事ないのに。 たとえ天と地が引っくり返っても、英海(ひでみ)は絶対にそんな事を言わない。 『でもね、小雪から英海(ひでみ)さんの話を聞いて恥ずかしくなったの。まさか、英海(ひでみ)さんの方から黄泉に逝く事を勧たなんて夢にも思わなかったから。……それだけじゃない、なにもかも小雪優先だよね。英海(ひでみ)さんは自分が辛くなったとしても、小雪の気持ちが一番なんだ。話を聞いて、それがよく分かった』 お姉ちゃん……英海(ひでみ)はそういう子なの、分かってくれて嬉しいよ。 もしも、お姉ちゃんが英海(ひでみ)の事を疎ましく思ったら……それがなにより悲しいの。 『小雪、ごめんね。お姉ちゃん、自分の事ばっかりだったね。小雪の方が辛いのに、お姉ちゃんの所にいるって言ってくれて嬉しかった。小雪は昔とちっとも変ってないね。優しい仔、思いやりがあって賢い仔、お姉ちゃんの自慢の娘……小雪、小雪……大好きよ、大事で大事で仕方がないよ。お姉ちゃんと同じくらい……英海(ひでみ)さんも、小雪の事を大事に想ってくれてるんだよね』 その通りよ。 お姉ちゃんも英海(ひでみ)も、同じくらいに私を深く愛してくれる。 そして私も同じくらいに愛してる。 『…………小雪、現世に行っても、またお姉ちゃんに会いに来てくれるんでしょう?』 もちろん、もちろんだわ……! 『…………ありがとう、……ん、ありがとね。小雪、現世(むこう)に行ったら英海(ひでみ)さんに伝えてくれる? ”小雪の事をどうぞよろしくお願いします” って。それと…………”いつか、ずっと先の未来にお会い出来る事を楽しみにしています” とも』 …………うな……うな……お姉ちゃん、ありがとう。 伝えるわ、 お姉ちゃんの言葉、必ず英海(ひでみ)に伝えるからね。
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