第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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◆ 『小雪、忘れ物はない? 現世まで気を付けて行くのよ? 途中でなにかあったらすぐに黄泉(こっち)に戻っておいで! お仕事も頑張ってね、あ、でも無理をしたらダメだからね! それから、それから、』 お、お姉ちゃん、落ち着いて。 ダイジョブだから、黄泉から現世は瞬き1つで到着するから。 なにも心配いらないわ。 ____お姉ちゃんが納得してくれた。 たくさん話して英海(ひでみ)の事も分かってくれて、これから現世に戻る私を視送ってくれてるの。 視送りはお姉ちゃんだけじゃない。 『小雪! 優子の事は私達に任せてちょうだい! ピピー!』 『優子が淋しくないように、毎日お米を届けるわ ピョー!』 『小雪もちょこちょこ帰ってきなさいよ? 待ってるわ! ピピピッ』 『今度は小雪も一緒に田んぼをしましょ! ピョー!』 『そうよ! 田んぼのお米でみんなでおにぎり食べるのよ! ピーッ!』 相変わらず賑やかなハッカチョ族の鳥の子達と、 『キュッキュッ! チュッチュッ! キュー!』 相変わらず甘えん坊で私に抱き着くハムの小雪も。 ああ、なんだかここは温かい。 緑豊かなプレサスメリルは大事な家族と大事な友人達がいる、私の居場所の1つだわ。 『ハッカチョのみんなにはいっぱいお世話になったわね。光るお米の道しるべ、あれはとっても助かったわ。優しくしてくれてありがとう。また黄泉(こっち)に戻って来たらお米を一緒に作らせてね。小雪もありがとう。久しぶりに会えて嬉しかった。虹ではずぅっと一緒だったものね。小雪……私はあなたが大好きよ。お姉ちゃんの事、よろしくね。お父さんとお母さんの言う事を良く聞いて、たくさん食べてたくさん遊んで元気でいてね。また戻ってくるから、また会えるからね』 私にひっつき離れない、ハムの小雪をお姉ちゃんが両手でそっと包み込む。 そしてそのまま肩に乗せると、真っ赤な目をして地面にしゃがみ、私と目線を合わせたの。 『小雪、小雪……もっとよく顔を視せて、……ああ、やっぱり小雪は可愛いねぇ……金色のおめめ、毛皮は雪みたいに真っ白で、こんなに綺麗な猫は現世でも黄泉でも視た事がないよ。……小雪、大好きよ』 ”小雪、大好きよ” 、この言葉を今まで何回言われただろう。 言われるたびに嬉しくなった。 昔も今も、普通の猫から三尾になった私だけれど嬉しい気持ちは変わらない。 そう、私としては変わっていないつもりでいるけど…… 『私もお姉ちゃんが大好き。……ねぇ、お姉ちゃんはいつだって私に ”大好き” って言ってくれるよね』 『うん、だっていっつも大好きなんだもの』 『そっかぁ、すごくすごく嬉しいよ。お姉ちゃん、あのね、1つだけ聞いても良い?』 『ん、なぁに?』 『……あのね、お姉ちゃんは……猫の私がヒトの言葉をこんなに話しても引かないの? いくら黄泉で慣れたからって、私、その……話し過ぎたかなって。化け猫みたいで怖くないのかなぁって、』
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