第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

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私は現世で、英海(ひでみ)の前では絶対に人の言葉を使わない。 あの子の前では普通の猫でいたいから。 お姉ちゃんの前でも普通の猫でいたかったけど、今回は誤解無く話をする為、どうしても人語が必要だった。 本当は少し引いたんじゃないかと、気持ち悪いと思われたんじゃないかと、心配だったんだ。 ドキドキしながらお姉ちゃんの顔を視た。 なんて言われるかしら、こんな事聞く事自体うっとうしいかしら……と思っていたのに。 お姉ちゃんは半分呆れて、半分笑ってこう言ったのよ。 『化け猫みたいって……化け猫のどこが悪いの? ”白猫”、”黒猫”、”三毛猫”、”化け猫”。ただの猫の種類じゃない。たくさん話してくれて嬉しかった。”うなうな” でもヒトの言葉でも、どっちにしたって小雪の声は可愛いからね。それに……ぷっ! あはは、思い出しちゃった。小雪は小さい頃からよーく喋る仔だったじゃない。昔とぜんぜん変わってない。ううん、もしもどんなに変わっても好きの気持ちは変わらない。ずっと大好きだよ』 うな……うな……お姉ちゃん、ありがとう。 そう言ってもらえて、笑ってくれて、私はお姉ちゃんの子供になれて本当に良かったよ。 …… ………… ……………… 『お姉ちゃん、小雪、ハッカチョちゃん達! これから現世に行ってくる! お姉ちゃん、お父さんとお母さんにも ”行ってきます” と伝えておいてね!』 瞬間移動スキル発動まであと僅か。 私は最後に大きな声を張り上げた。 お姉ちゃんは鳥の子達と団子になって視送るも、 『分かった! お母さん達には伝えておくから気を付けてね! 小雪、元気でね! 英海(ひでみ)さんにもよろしくね! それと……小雪はこの次いつ帰ってこれる? ……って、ごめん……出発前からこんな事を聞いちゃった、また会えるのは分かっているのに、それでも少し淋しくて……ああもう、お姉ちゃんはダメダメだぁ』 そう言って鼻の頭を真っ赤にさせていた。 だから私はウニャリと笑って、 『来週!』 短く大きく答えたの。 お姉ちゃんは ”へ……?” って顔して固まってるから、さらにウニャリとクールに笑って言ったのよ。 『英海(ひでみ)の仕事の進捗で変わるけど、数日あればどうにかなるはずだわ。仕事が終わったらまたすぐに戻ってくる。お姉ちゃんとみんなに会いたいし、あと、黄泉(こっち)でたくさんの(ひと)と猫に助けてもらったから、お礼にもいくつもり。だからすぐだよ、またすぐに会えるにゃっ!』 『ほ、本当!?(ぱぁぁぁ!)』←お姉ちゃん 『『『『『ピョー!!』』』』』←ハッカチョ族 『キューーー!(ハムゥゥ!)』←ハムの小雪 最後はみんなで笑い合い、手を振って羽を振って____ ____ブンッ、 電子機器の起動音に似たよく似た音。 それを最後に黄泉の国を、プレサスメリルを後にしたのにゃ。
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