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◆
____ブンッ、
瞬き一つで現世に到着。
着いたのは、
『ん!? 大福ちゃん!』←平蔵
「え!? あ! 大福ちゃぁぁぁん!」←ユリ
”おくりび事務所”。
まずはココで英海の居場所を聞かなくちゃ。
『平蔵、ユリ、挨拶は抜きよ。彰司から話を聞いて帰ってきたわ。私の英海は今どこにいるの?』
手短にそう聞くと秒の早さでユリが答えた。
「現場の住所はS県H市✕✕町9010番地、廃工場の跡地だよ! 悪霊が複数いると思われて難易度高、岡村さんはそこに1人で行っちゃったの!」
S県H市なら前に行った事があるわね。
それならすぐに視つけられる、そこに行きつつ英海の気配を探せばいい。
慌てるユリのすぐ後に、同じく慌てる平蔵が滑り込む。
『大福ちゃん、よく戻ってきてくれたね! 岡村君を助けてあげて! 私は事務所を離れる事が出来ないし、どうしてもならショウちゃんに行ってもらおうと思ってたんです! 大福ちゃぁぁぁん! 本当にありがとねぇぇぇぇ!』
ううん。
良いのよ、分かってる。
ユリは仕事が出来るけど、まだ入社して1年も経っていない。
しかも初めての繁忙期だもの、どうしたってサポートが必要よ。
ユリのサポートは平蔵が、英海のサポートは他の誰でもない、私がするわ!
『場所は把握、ありがとう! じゃあ行ってくるわね!』
ブンッ、と2回目。
瞬間移動のスキルを発動。
瞬き一つで着いたのは____
____崩れたコンクリ、廃材の山、
剥き出しの鉄筋に、うっそうとした草木が絡む廃工場。
ここのどこかに英海がいるはず、だけど近くに姿が視えない。
どこ? どこにいる?
転がる瓦礫と赤錆と、荒れた敷地で私は耳を澄ませたの。
すると、
…………ゆ、許してくれ、
…………俺達が悪かった、
……もう悪い事はしない、
…………約束するから、
縋るような低い声がかすかに聞こえた。
それと同時に聞こえてきたのは、
…………本当ですか?
……本当に信じても良いんですか?
……んー……どうしようかなぁ
…………そこまで言うなら信じようかなぁ
今の、英海の声だわ!
私は即座に駆け出した。
嫌な予感がガシガシする、あの子は人が好すぎるの。
悪霊の魂乞いにコロッと騙され、酷い目に遭わされるかも。
心配よ、早く、早く行かなくちゃ!
声が聞こえる方向に全速力で走りに走ったその先に、薄っすらとした人影が視えた。
目を凝らしよくよく視れば、視れば、……うな、うなななな……うなっ!
いたーーーーーーー!
私の英海! 視つけたにゃーーーーー!
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