第九章 霊媒師こぼれ話_エイミウの星の砂

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~~~本日の待ち合わせは10時、到着は20分前厳守・水渦(みうず)視点~~~ AM5:24 …… ………… ………………目が、 覚めてしまった。 アラームのセット時間の最終は6時半(・・・・・・)。 寝起きは悪くない方だけど、万が一にも寝過ごさないよう5分刻みで複数セット。 6:00、6:05、6:10、6:15、6:20、6:25、そして最後に6時半。 これだけ鳴らせばなにがあっても起きられる。 さらに保険で(6時)半をすぎても起きてこない場合には、姉ちゃんに起こしに来てと頼んである。 それなのに…………最終アラームの66分前に起きてしまった。 薄暗い部屋の中、布団に寝たまま窓を見た。 カーテンの隙間から朝焼けのオレンジ色が光って見える。 今日は傘がいるかもしれない。 秋の朝焼けは雨が降る可能性があるからだ。 それならば、折り畳み傘を持って行こう。 私の分と、それからあの人の分も。 荷物になるけど風邪をひかれるよりずっと良い。 あの人にはいつも元気でいてほしい、いつでも笑顔でいてほしいから……と、考えたのがまずかった。 途端、頭の中にあの人の笑った顔が浮かんでしまって体調不良を引き起こす。 心臓がうるさいくらいに早打ちし、息が苦しく顔に熱がこもってしまう。 片想いが4年、付き合って2年、計6年も経っているのに未だこうして異常が起こる。 一体、……いつになったら慣れるのだろう。 そもそも、あの人は完璧すぎるのだ。 若木のような茶色い髪に茶色い瞳、整った目鼻立ちは優し気で、背が高くスラッとしていてどんな服でも似合ってしまう。 本人曰く「僕は地味な量産型」だがとんでもない。 心が清く見目麗しいあの人を、見ているだけで呼吸が止まる、声を聴けば脈拍が暴走し、指が触れれば激しく熱傷…………本当に、会うだけで命懸けだ。 いつ倒れてもおかしくない、いつ橋を渡っても(・・・・・・)おかしくない。 会えば苦しく体調不良が常となるのに会いたくて仕方がない。 会えば時間は矢の如く。 (こう)を感じて自分が自分でなくなるような、一緒の時間は実は幻、夢の中にいるのでは? と勘ぐってしまう。 1度だけ、そういう気持ちを話した事がある。 あまりにも(こう)が過ぎ、逆に不安になったからだ。 それを聞いたあの人は、 ____奇遇だね、 ____実は僕も思ってたんだ、 ____会えるとすごく嬉しいって、 ____話すととても楽しいって、 ____こんなに幸せでいいのかなぁって、 ____同じ事を考えてた、 ____僕とアナタは似てるのかもね、 そう言って優しい顔で笑ってくれた。 嬉しかった、泣きそうになった、……不安が少し和らいだ。 だけどやはり、あの笑顔は反則だとも思った。 眩しすぎて温かすぎて、私にとって破壊力が凄まじい。
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