第九章 霊媒師こぼれ話_エイミウの星の砂

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◆ AM5:36 起床時間より幾分早いが起きる事にした。 布団をたたんで部屋を整えリビングへと向かう。 築古のマンションだから、廊下を歩くと僅かにキシッと音が鳴る。 ここに住んで早5年。 今ではもう、すっかり慣れた軋む音。 間仕切りドアを手前に引くと、窓から差し込む明るい日差しと焼き魚の良い匂い。 リビングと床続きの台所には、姉と兄が仲良く並んで立っていた。 毎日ラブフラワー(お店)で帰宅時間は深夜すぎ、それでも2人はこうして毎朝早起きをする。 そして欠かさず、私の為に朝食を作るのだ。 大変だからそんな事はしなくて良いと、何度言っても聞き入れない。 「んーー良い匂い! やっぱりぃ、朝はぁ、焼き魚だよねぇ♪」←姉 「あとは海苔と納豆と味噌汁、これも外せねぇよ」←兄 朝から元気な笑い声、毎日の決まったやり取り。 ああ、これもそうだ。 一体、いつになったら慣れるのだろう。 家の中に姉ちゃんがいる、健吾さんもいる、家族がいる。 家族は私を見つけると、 「あっ! みぃちゃんが起きたぁ! おはよう♪」 「みぃちゃん! 朝メシはもうすぐ出来るからな!」 惜しむ事なく笑顔をくれる。 大きな声で私の名前を呼びながら、歯を見せて笑うんだ。 そのたびに、鼻の奥がツンと痛んで泣きそうになる。 少しも慣れない、当たり前だと思えない。 家族が傍にいてくれるのが夢のようで、毎朝毎晩、幸せを噛みしめる。 過去に私が壊した幸せ、その幸せが此処にある。 「姉ちゃん、健吾さん、おはよう。朝ごはん、いつもありがとうね」 この幸せは、あの人が繋ぎ戻してくれたもの。 孤独の沼に鎖に繋がれ沈んだ私を、必死になって引き上げてくれたんだ。
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