第二章 霊媒師こぼれ話_持丸平蔵と清水誠ー1

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◆ T駅からN線に乗って5駅、そこからK線に乗り換えて1駅。 30分も電車に乗ればF駅に到着です。 ホントはね、やろうと思えば瞬間移動も出来るけど、生きてた頃とおんなじように、あえて電車で移動です(楽しいし)。 あわよくば道中、私の姿が視える生者に出会えれば……と思いましたが残念ながら空振りでした。 でも挫けませんよ、きっとどこかにいるはずです。 赤い糸で結ばれている、まだ視ぬダイヤの原石が。 そんなコトを考えながら、駅からテクテク歩いて行けばF市のハローワークに到着しました。 3階建ての古い建物、出入口は大きなガラスの自動ドア。 ワクワクしますねぇ! ここに運命の生者がいるかもしれないのですから! 中に入るとカウンターが横一列に並び、各席にはパソコンが置いてあります。 ふふふ、こう視えて私、パソコンは結構得意なんですよ。 ニュースやお天気、電車賃を調べるのだってみーんなインターネットです。 生きていた頃、会社に着いたらまず ”ヤフゥン” を見るのが日課でした。 時代はインターネットですからね。 年寄りだって着いていかなきゃいけませんよ。 いやぁ、それにしても人が多いですねぇ。 若い人から年配者まで、男性女性も関係なくいらっしゃる。 カウンターでハローワークの職員さんとお話される方、壁際のパソコンで自分で仕事を検索する方、なにかのパンフレットを読み込んでる方、みなさんとても真剣です。 そうですよね、出来れば条件の良い会社、自分に合った会社、そういう所を見つけたいですよね。 ですが……そう、時代もあって、希望通りにいかなかったり、中々仕事が見つからなくて、泣きたくなる日もあるかもしれない。 生きていれば色んな事がありますからね。 辛い事も悲しい事も、時に重なり起こります。 そういう時はどうか、どうかお願いです。 我慢をしないで泣いてください。 恰好悪くて良いんです、弱くたって良いんです。 たくさん泣いて、たくさん眠って、たくさん食べて、それで少し落ち着いたら、自分の良い所を1つでいいから口に出して言ってみてください。 恥ずかしがらずに、1人の時にこっそり言えば良いんです。 そうやって自分を認めて労って、それを力にしてください。 強さだけが力じゃない。 弱い力も束ねたら、それが生きる力になるの。 ふふふ、 年寄りの言うコトは退屈でしょうが根拠があるんです。 78年、時間をかけて来た道です。 ある程度ならわかります。 だいじょうぶ、心配しないで。 きっとうまくいきますから。 …… ………… ………………って、………………んー、 私……けっこう良いコト言ったつもりなんですけどねぇ。 ですが……(キョロキョロキョロ)……残念です。 人はこんなにいるというのに、霊力(ちから)持ちがいないみたいで、誰の耳にも届いてなーい! ああん……長い独り言になっちゃいました。 ガ……ガックシです。
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