第九章 霊媒師こぼれ話_エイミウの星の砂

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水渦(みうず)さん、ありがとう。じゃあさ、午前中は写真を一緒に楽しもう。それで、午後になったらアナタの行きたい所に行こうよ。どこだって付き合っちゃう。映画? ショッピング? それともカフェ? なんでも言って!」 元々午後はノープラン。 水渦(みうず)さんの好きな所に2人で行こうと希望を聞いた。 僕はこの時、半分ふざけて「なんなりと、お嬢様♪」てなコトを言いながら、彼女の顔を下から覗き込んだんだ。 そしたらさ、水渦(みうず)さんは驚いたのか、顔を真っ赤にしちゃってさ、近い距離で目が合ったまま、うんとうんと小さな声で、 「…………ど、どこでもいい、お、岡村さんの行きたいところに行きたい、」 って、言ったんだ。 え……ちょっと……なんだこれ……不意打ちにもほどがあるぞ。 俯き気味の水渦(みうず)さんは真っ赤な顔で石化して、モジモジしながら敬語は崩壊。 や、それ自体はぜんぜん良いけど、でもさ、いつだってフラットでガチガチ敬語が崩れるなんて滅多にないのに。 それとさ、言うに事を欠き、僕の行きたい所に行きたい?  僕の行きたい所って……それでいいの? え……? え……? えっと……えっと……って、だ、だめだ!  たった今、愛しいゲージが右方向に振り切りましたっ!(ズキューーーーン!!) 「そ、そ、そんなコト言うと、午後も ”ネコネコ写真展” になっちゃうよ?」 「う、うん、いいよ」 2人してモジモジモジモジ。 開店前のデパート正面入り口手前で向かい合ってモジモジモジモジ(ほら、9時40分からK駅にいるから)。 傍から見たら、無駄な時間と思われるかもしれないけどさ、この人と一緒にいると、こんな時間もすこぶる幸せ。 本当に本当に大好きだ。
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