第九章 霊媒師こぼれ話_エイミウの星の砂

16/102
前へ
/372ページ
次へ
「…………これで送信完了、……ああ、失礼しました。あまりに見事なパンケーキだったので、撮った写真をユリさんに送信していました。岡村さん、大丈夫ですよ。最初は少々驚きましたが、このくらいなら2人で食べられます」 「え、本当? だけど僕、けっこうお腹いっぱいだけど」 「問題ありません。こういう時はケーキの分だけカロリーを消費すれば良いんです」 「なにそれ、今からどこか走りに行くとか?」 言ってるコトの意味が分からずマヌケな顔でそう聞くと、水渦(みうず)さんは辺りをコソッと見た後に、両手両五指曲げて絡めて結び出す。 それって……印? なんで今? こんな所で? 「辺りの人に見つからないよう放電をするんです。霊力(ちから)を使えばカロリーが消費され、パンケーキの2枚や3枚、問題なくいただけますから」 なるほどっ、そういうコトか! 確かにそうだ、現場で霊力(ちから)をたくさん使うとお腹がグーグー鳴るもんね! こんな霊力(ちから)の使い方があっただなんて! さすがは僕より歴の長い霊媒師! 水渦(みうず)先輩、ハイスキル! 「お、おかしな事を言わないでください! それよりもいただきましょう。せっかくのパンケーキですから」 こうして僕らはコソッと放電しまくって、ハチミツたっぷりバベルの塔を食べ始めたの。 それは甘くてフワフワで、ジャスミンティーとも良く合った。 1枚2枚と平らげて、3枚目を切り分けながらもお喋りに花が咲く。 水渦(みうず)さんは無口に見えてそうでもないから、いつまで経っても話題が尽きない。 そんな中、ふと、思い出したんだ。 前回出社で ”おくりび事務所” に行った時、社長が言ってた事なんだけど…… 「ねぇねぇ、そう言えば社長から聞いた? 今度の会社の創立記念日、今の所依頼が1件も入ってないんだって。もしもこのまま0件だったら、その日は業務をお休みするって言ってたの。でね、社員全員休みが揃うの滅多にないから、社長の家に集まってバーベキューでもやらないかって。水渦(みうず)さん、バーベキューに行った事が無いって言ってたよね? だからさ、本当に会社が休みになったら一緒に行こうよ!」 メンバーはいつものみんなとその家族。 大勢でワイワイガヤガヤ、楽しいに決まっている。 昔のアナタだったなら、絶対参加しないだろう。 でもさ、今ならきっと楽しめると思うんだ。
/372ページ

最初のコメントを投稿しよう!

474人が本棚に入れています
本棚に追加