第九章 霊媒師こぼれ話_エイミウの星の砂

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◆ 「こっちこっち」 そう言ってユリさんは、長い廊下を私の手を引き部屋まで案内してくれた。 繋いだその手は温かで、ほんの少し湿っている。 まるで子供の手のひらだ。 優しくて純粋で、泣き虫だけど、とっても強い女の子。 ”どうぞ” と言われて部屋の中に入ってみると、日本家屋の外観とは打って変わって洋室だった。 全体的には白が基調。 白い壁、白い板の間、毛足の長い薄いピンクのラグの上には白色のローテーブル。 タンスもソファも鏡台も、なにもかもが真っ白だ。 ただ、白だからとてシンプルすぎる事もなく、あちらこちらにハートの形の小物が散りばめられていて、ユリさんらしい実に可愛い部屋なのだ。 「水渦(みうず)さん、散らかってるけど座ってください。あ、そこのハートのクッションを使ってみて! フワフワだから座り心地が良いんです」 言われて視線を動かせば、なるほど確かにフワフワしていて気持ちが良さそう。 でも、こんなに綺麗なクッションを尻の下に敷くのはなんだか気が引ける。 だから私はラグに直接座り込み、勧められたクッションを胸に抱えてみたのだけれど……あぁ、これは気持ちが良い。 この感触は大福を抱えた時に良く似ている。 さすが、綺麗な人はクッションさえも上質だと感心していると、 「水渦(みうず)さん、少し待っててね。今お茶を淹れてくるから……って、ん!? なんでクッション敷かないの? オシリが痛くなっちゃいますよ!」 ユリさんが慌てたようにこう言った。 それに対し、 「このクッションがあまりに綺麗で踏むのが勿体ない気がしまして。大丈夫です。ラグもフワフワしていますし、尻の脂肪がクッション代わりになりますから」 問題無いと伝えたが、ユリさんには「問題アリです!」と返されて、可愛い顔でジッと見つめてくるものだから、仕方なしに尻の下に敷いたのだ。 ユリさんはそれを見て満足そうに頷くと、お茶を淹れに部屋を出て、5分もしないそのうちにお盆を手にして戻ってきた。 出されたお茶はジャスミンティー。 カップは白地に赤いハートが大きく描かれ、これもやはり可愛らしい。
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