第九章 霊媒師こぼれ話_エイミウの星の砂

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そう、ユリさんはハートの小物やハートの模様が大好きだ。 以前に聞いた話では、本人も集めているが、清水や義理の父親もこぞってハートを買い込んでくるという。 だからこんなに部屋の中もハートの小物で溢れているのだ。 ハートの数は愛情の数。 ユリさんは家族に大事にされている、それを思うと何故だか私も嬉しく感じる。 それから、私達はジャスミンティーを飲みながら他愛も無い話をした。 ユリさんはよく笑い、しばらくそうして言葉を交わしていたのだけれど、話の区切りが一旦ついたその時に、 「いけないいけない、話し込んだら時間が足りなくなっちゃう。今日は水渦(みうず)さんをもっと綺麗にしちゃうんだから! あのね、見て見て(ゴソゴソゴソ)、前に話したピンなんだけどこれなんだ」 そう言って取り出したのは、金色で飾りの部分は桜の花……いや、これは梅の花だ。 キラキラ光るそのピンは梅の花が大小二輪咲いている。 思わず息が漏れてしまった……私が普段使うピンは、ただの黒いアメリカヘアピンと呼ばれる物。 こんなに綺麗なピンを……私に? 「どうかなぁ? 気に入ってもらえたかなぁ? 私ね、これを見付けた時、絶対に水渦(みうず)さんに似合うと思ったんです。これで髪を結っても良いですか?」 これを……私の髪に、…………こんなに綺麗なピン……恐れ多いと思ったけれど、それ以上につけてみたいと思ってしまった。 「…………ユリさん、ありがとうございます。私……私……結ってほしいです。綺麗なそのピンをつけてほしいです、」 私如きが____頭の隅で思ったけれど勇気を出してそう言うと、ユリさんこそが花が咲いた笑顔になって、 「かしこまりです! 今すぐ始めましょう!」 こう言って、私を鏡台に座らせたのだ。
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