474人が本棚に入れています
本棚に追加
そう、ユリさんはハートの小物やハートの模様が大好きだ。
以前に聞いた話では、本人も集めているが、清水や義理の父親もこぞってハートを買い込んでくるという。
だからこんなに部屋の中もハートの小物で溢れているのだ。
ハートの数は愛情の数。
ユリさんは家族に大事にされている、それを思うと何故だか私も嬉しく感じる。
それから、私達はジャスミンティーを飲みながら他愛も無い話をした。
ユリさんはよく笑い、しばらくそうして言葉を交わしていたのだけれど、話の区切りが一旦ついたその時に、
「いけないいけない、話し込んだら時間が足りなくなっちゃう。今日は水渦さんをもっと綺麗にしちゃうんだから! あのね、見て見て(ゴソゴソゴソ)、前に話したピンなんだけどこれなんだ」
そう言って取り出したのは、金色で飾りの部分は桜の花……いや、これは梅の花だ。
キラキラ光るそのピンは梅の花が大小二輪咲いている。
思わず息が漏れてしまった……私が普段使うピンは、ただの黒いアメリカヘアピンと呼ばれる物。
こんなに綺麗なピンを……私に?
「どうかなぁ? 気に入ってもらえたかなぁ? 私ね、これを見付けた時、絶対に水渦さんに似合うと思ったんです。これで髪を結っても良いですか?」
これを……私の髪に、…………こんなに綺麗なピン……恐れ多いと思ったけれど、それ以上につけてみたいと思ってしまった。
「…………ユリさん、ありがとうございます。私……私……結ってほしいです。綺麗なそのピンをつけてほしいです、」
私如きが____頭の隅で思ったけれど勇気を出してそう言うと、ユリさんこそが花が咲いた笑顔になって、
「かしこまりです! 今すぐ始めましょう!」
こう言って、私を鏡台に座らせたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!