第九章 霊媒師こぼれ話_エイミウの星の砂

25/102
前へ
/372ページ
次へ
ユリさんは笑いながら手を動かして、とかした髪にヘアオイルを揉み込むようにつけている。 ああ……これも良い香りだ。 花の香りに癒されて肩の力が思わず抜ける……が。 「ふふふ……そう言えば思い出しました。”気楽が一番” って、岡村さんもよく言いますよねぇ(パァァァ)」 鏡越し、天女の顔がこれでもかと弾みだす。 私は私で、突如出されたあの人の名に固まった。 ユリさんはそんな私に何度か大きく頷いて(その頷きの意味とは……)、鏡から目線を動かし、肩をこえた私の髪を低い位置で一つに結わくと、続けてそれを毛先まで三つ編みにした。 さらには、編んだ髪を上から順に指で適量引っ張りながら、ルーズな感じに左右に広げる。 細かい作業だ……それを幾度も繰り返しつつ、天女は私にこう言った。 「岡村さんって優しいですよね。水渦(みうず)さんも優しいし、2人は本当にお似合いだと思います」 かぁぁぁぁ!←体温が急上昇 な、何を突然! ユリさんの言葉を聞いて両耳が熱くなる。 なんと答えて良いものか分からない。 「私ね、本当のコトを言っちゃいますけど、最初から思ってたんです。2人はいつか付き合う事になるんだろうなぁって」 な、何を根拠に!? ああでも、奇跡としか言いようが無いけれど確かに今は付き合っている。 私が動揺していると、ユリさんは形造った三つ編みを、内側に折ってたたむと毛先を結わいたゴムの中に器用に入れ込みアメリカピンで固定した。 そして今度は頭の部分の髪の毛を、ランダムに指で引き出し ”こなれた感じ” に崩していくと…… 「よし! 後ろ髪はこれで完成ー! 次は前髪と横の髪をヘアアイロンで可愛くしましょう♪」 ユリさんは満足そうに私の髪をうっとり眺め、次の作業に備える為に、ヘアアイロンの電気コードをコンセントに差し込んだ。 ”温まるまで待っててね” とニッコリ笑うユリさんだけど……あ、あの、その前に、さっきの話の続きをお聞かせ願えませんか。 私とあの人が ”いつか付き合う事になる” と、何を持ってそう思ったかが知りたいです。
/372ページ

最初のコメントを投稿しよう!

474人が本棚に入れています
本棚に追加