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「ん? どうしてそう思ったかですか? そうですねぇ、ほとんどが直観みたいなモノでしたけど、いくつか根拠があったんです。それはですね、……あ、ちょっと待って、ヘアアイロンが温まったみたいです。水渦さん、先に前髪を可愛くするから動かないでくださいね」
良い所で……! とは思ったものの、ヘアアイロンは整髪の道具の中でも群を抜いて取り扱いが難しい。
なんと言っても高熱になる。
此処で私が余計な事を話したり、身じろぎをして事故を招いたら大変だ。
私はどうでも構わないけど、ユリさんにもしもの事があってはならない。
言葉の通り、私は石となりましょう。
ユリさんは前髪を指で掬うとヘアアイロンで挟み込み、そのままゆっくり斜め下へと動かしていく。
天女はすこぶる真剣顔で、私なんぞの前髪を一生懸命整えてくれるのだ。
ああ、なんてありがたい。
「大丈夫? 熱くないですか? もう少しで終わりますからね。毛先がクルクルしすぎないように気をつけながら……軽い感じにフワッと横に流してあげて……うん、出来た! 前髪はこれで完成ー! 次はサイドの髪を巻きますね。こっちはほんの少しだけ……こうして……それからこうして……よし! こっちも完成ー! 水渦さん、どうかな、見てみて!」
言われて鏡に目線をやれば…………すごい……!
髪が綺麗にまとまっている!
私は普段、動きやすさと清潔感を考えて、髪を一つに引き詰めるだけの髪型
だけど、ユリさんが手掛けてくれた髪型はフワッとしていてフェミニンで、髪の毛自体が何と言うか飾りに見える。
「ユリさん、……ありがとうございます。こんなに素敵にしていただいて、私、なんて言ったら良いか……」
鏡は未だ苦手意識があるけれど、それでも、私は鏡に釘付けだった。
ユリさんは私を見ながらニコニコ笑い、最後の仕上げと金色に輝くピンを後ろの髪に飾ってくれた。
挿し絵追加です
2023年12月9日
![dd7d3c9a-64f5-4a01-9cf3-601258a4e04f](https://img.estar.jp/public/user_upload/dd7d3c9a-64f5-4a01-9cf3-601258a4e04f.jpg?width=800&format=jpg)
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