第九章 霊媒師こぼれ話_エイミウの星の砂

26/102
前へ
/372ページ
次へ
「ん? どうしてそう思ったかですか? そうですねぇ、ほとんどが直観みたいなモノでしたけど、いくつか根拠があったんです。それはですね、……あ、ちょっと待って、ヘアアイロンが温まったみたいです。水渦(みうず)さん、先に前髪を可愛くするから動かないでくださいね」 良い所で……! とは思ったものの、ヘアアイロンは整髪の道具の中でも群を抜いて取り扱いが難しい。 なんと言っても高熱になる。 此処で私が余計な事を話したり、身じろぎをして事故を招いたら大変だ。 私はどうでも構わないけど、ユリさんにもしもの事があってはならない。 言葉の通り、私は石となりましょう。 ユリさんは前髪を指で(すく)うとヘアアイロンで挟み込み、そのままゆっくり斜め下へと動かしていく。 天女はすこぶる真剣顔で、私なんぞの前髪を一生懸命整えてくれるのだ。 ああ、なんてありがたい。 「大丈夫? 熱くないですか? もう少しで終わりますからね。毛先がクルクルしすぎないように気をつけながら……軽い感じにフワッと横に流してあげて……うん、出来た! 前髪はこれで完成ー! 次はサイドの髪を巻きますね。こっちはほんの少しだけ……こうして……それからこうして……よし! こっちも完成ー! 水渦(みうず)さん、どうかな、見てみて!」 言われて鏡に目線をやれば…………すごい……! 髪が綺麗にまとまっている! 私は普段、動きやすさと清潔感を考えて、髪を一つに引き詰めるだけの髪型 だけど、ユリさんが手掛けてくれた髪型はフワッとしていてフェミニンで、髪の毛自体が何と言うか飾りに見える。 「ユリさん、……ありがとうございます。こんなに素敵にしていただいて、私、なんて言ったら良いか……」 鏡は未だ苦手意識があるけれど、それでも、私は鏡に釘付けだった。 ユリさんは私を見ながらニコニコ笑い、最後の仕上げと金色に輝くピンを後ろの髪に飾ってくれた。 挿し絵追加です 2023年12月9日 dd7d3c9a-64f5-4a01-9cf3-601258a4e04f
/372ページ

最初のコメントを投稿しよう!

474人が本棚に入れています
本棚に追加