第九章 霊媒師こぼれ話_エイミウの星の砂

29/102
前へ
/378ページ
次へ
ユリさんは ”私、すごいでしょう?” と言いたげで、頬を染め、キラキラした目で私を見ている。 なんて可愛い人だろう。 こんな女性が配偶者とは、清水は本当に幸せ者だ。 それはそれとして。 「なるほど……確かに、岡村さんは人の良い所を見つけるのが上手です。ですが、当時の私は自分で言うのもおかしいですが、人の気持ちが理解出来ずに暴言ばかり。彼と出会った初日は特に、……特に酷くて、あろう事か、私は彼に霊矢を撃ち込みました。あの時は大福が彼を守ってくれましたけど、もしも当たっていたらと思うと未だに夢でうなされます。思い出すと自分自身に嫌気がさします。どうしようもない愚か者です、万死に値します。ですから、あの段階で彼と後に付き合う事になるなどと、私も含めて誰も予想しなかったと思います。それなのに、ユリさんはそう思われたのですね」 不思議な人だ。 思えば、ユリさんだけは最初から嫌ではなかった。 積極的に交流を持とうとまでは思わなかったが、彼女に対して暴言を吐く気にはならなかった。 当時の私は誰彼構わず毒を吐いていたと言うのに。 「ふふふ、スゴイでしょう? 私ね、昔からこういう所に良く気がつくんです。学生の頃も、誰が誰を想っているとかすぐ分かったもの」 ユリさんは、顔の横で人差し指を上に向け得意そうに笑っている。 本当に凄い……私のような愚鈍な者もいると言うのに、なんて鋭い観察眼だ。 「心から感服します。そうなるともしかして、ユリさんが清水と結婚する事も事前に予感があったのですか?」 此処までの観察眼だ。 恐らくはそうでないかと聞いてみると、ユリさんは途端に慌て、顔を真っ赤に両手をブンブン振り出した。 「え!? 私!? いや! それはぜんぜん! 逆です! 結婚どころか付き合う事もムリだと思って半分以上は諦めてたもの! だから付き合う事になったのも結婚する事になったのも、びっくりしすぎて頭がぜんぜん追いつかなくて、でもでも嬉しかったけど、だからその、えっと、自分のコトは分からなかったというか……んもー! ヘンなコト聞かないでー!」
/378ページ

最初のコメントを投稿しよう!

478人が本棚に入れています
本棚に追加