第九章 霊媒師こぼれ話_エイミウの星の砂

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ボフン! 赤いハートのクッションに顔を埋めてバタ足をするユリさんは、しばらくそうして泳いでいたが、ふと足を止めると上目遣いにこんな事を言いだした。 「と、とにかくですね、私のコトはどうでもいいんです。それよりも水渦(みうず)さん、しばらく髪は毛先を揃えて切るだけにしてください。髪を伸ばすの、短くするのは禁止ですから」 ………………はい? 短くするのは禁止って……何故急に髪の話になるのだろうか。 脈絡が無い、話が飛んで追いつくのが難しい。 私が首を傾げているとユリさんは、 「良くわからないけど、なんとなく予感がするの。だからね、いつでも髪が結えるようにしておかなくちゃ。ん? 言ってる意味が分からない? えへへ、分からないなら良いです。んん? 教えてほしい? ダメですよー、内緒です。大丈夫、多分だけどそのうち分かると思いますから」 天女の笑顔で何の話か教えてくれない。 気にはなったが、それ以上聞く事が出来なかった。 なぜなら、ユリさんの部屋のドアの向こう側から大きな声が聞こえてきたから。 声は複数、ハスキーボイスとピアノの音色と……それから、舌足らずな幼い二つの重なる声……そしてノックの音がした。 トントン! ____ユリちゃんいるかー? 水渦(みうず)も来てんだろー? ハスキーな大きな声に呼びかけられて「はーい!」と天女が立ち上がり、ドアを開けるとそこには…… 「(わり)いな! 誠が良いって言ったから勝手に部屋(ココ)まで来ちゃったわ!」 長い髪を一つにまとめた弥生さんと、 『ユリも水渦(みうず)も久しぶり! 元気だった?』 絶世の美女マジョリカさんと、 「ユリリ! ミーズもいる!」 「ばべきゅーするぅ!」 志村家の双子の天使、弥春(みはる)君と茉春(まはる)ちゃんが立っていたのだ。
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