487人が本棚に入れています
本棚に追加
私は今まで何十人、何百人もの霊力者を見てきました。
霊の視え方は同じ霊力者でも個々に違う。
有する霊力が強ければ強いほど、霊の姿がハッキリ視える。
私の声を聞き、私の姿を視て、私と言葉を交わしたあの子は、どれだけ霊力を有するのでしょう。
強い霊力があるがこそ。
彼から視れば、私の姿は生者となんら変わりがないの……これは本当にすごい事ですよ……!
まさにダイヤの原石です。
しかもこれは百カラットレベルです。
なのに……
「ん……この会社は条件が良いけどC県じゃあ通えないよ。コッチの会社は都内だけどお給料が低すぎる……これじゃあ家賃が払えない。最低手取りでこのくらいは欲しいよなぁ……営業とコルセンばっかで見てたけど……販売も視野に入れてみるか……」
ブツブツと呟きながら、霊媒師とは関係ない求人ばかり見てるじゃないの!
んまー!
勿体ない!
せっかくの才能を無駄にするなんて!
視てられません、ここはもう直接交渉と行きましょう!
1歩2歩3歩、トトトと近付きお声がけ。
れっつとらい!
『はい、こんにちは。お仕事探し、頑張ってますねぇ』
ニッコリ笑ってパソコン画面を覗き込む……と、男の子は斜め後ろに振り向きました。
「あ……あなたはさっきの……こんにちは。……えっと……はい、頑張って探してるんですけど、中々条件に合う会社が無くて困ってるところです」
あらー!
この子やっぱり良い子ですよ。
いきなり話しかけたのに嫌な顔ひとつしないんだから。
霊力もある、優しさもある、といったところかしら。
ますます気に入っちゃいました。
あぁん、どうにかしておくりびの子にしたいですねぇ。
『なるほど、合う会社が見つからないのですね。それはさぞお困りでしょう。もし良かったら私にもお手伝いをさせて頂けませんか?』
ニヤケてしまう顔を引き締め、下げた右手で印を組み、ハローワークの職員さんが首から下げてるIDカードをササッと構築。
それを私も首にぶら下げニコッと笑えば、
「あなたはハローワークの職員さんでしたか。んーでも初めてお会いしましたね。僕、ほとんど毎日通ってるのに」
ちょっぴり首を傾げてるけど、職員さんだと勘違いしてくれました。
『たまたま会わなかっただけでしょう。そんな事よりお仕事探しですよ。私もお手伝いします。実はですね……あなたにピッタリの求人があるんです。ご案内しますからアチラの席に移動しませんか?』
ドギマギしながらそう言うと、彼は素直に私の後を着いてきます。
ここまで順調!
このあとはウチの会社を猛プッシュの予定です。
さぁ、頑張りますよぉ!
最初のコメントを投稿しよう!