第二章 霊媒師こぼれ話_持丸平蔵と清水誠ー1

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私は今まで何十人、何百人もの霊力者を見てきました。 霊の視え方は同じ霊力者でも個々に違う。 有する霊力(ちから)が強ければ強いほど、霊の姿がハッキリ視える。 私の声を聞き、私の姿を視て、私と言葉を交わしたあの子は、どれだけ霊力(ちから)を有するのでしょう。 強い霊力(ちから)があるがこそ。 彼から視れば、私の姿は生者となんら変わりがないの……これは本当にすごい事ですよ……! まさにダイヤの原石です。 しかもこれは百カラットレベルです。 なのに…… 「ん……この会社は条件が良いけどC県じゃあ通えないよ。コッチの会社は都内だけどお給料が低すぎる……これじゃあ家賃が払えない。最低手取りでこのくらいは欲しいよなぁ……営業とコルセンばっかで見てたけど……販売も視野に入れてみるか……」 ブツブツと呟きながら、霊媒師とは関係ない求人ばかり見てるじゃないの! んまー! 勿体ない! せっかくの才能を無駄にするなんて! 視てられません、ここはもう直接交渉と行きましょう! 1歩2歩3歩、トトトと近付きお声がけ。 れっつとらい! 『はい、こんにちは。お仕事探し、頑張ってますねぇ』 ニッコリ笑ってパソコン画面を覗き込む……と、男の子は斜め後ろに振り向きました。 「あ……あなたはさっきの……こんにちは。……えっと……はい、頑張って探してるんですけど、中々条件に合う会社が無くて困ってるところです」 あらー! この子やっぱり良い子ですよ。 いきなり話しかけたのに嫌な顔ひとつしないんだから。 霊力(ちから)もある、優しさもある、といったところかしら。 ますます気に入っちゃいました。 あぁん、どうにかしておくりび(ウチ)の子にしたいですねぇ。 『なるほど、合う会社が見つからないのですね。それはさぞお困りでしょう。もし良かったら私にもお手伝いをさせて頂けませんか?』 ニヤケてしまう顔を引き締め、下げた右手で印を組み、ハローワークの職員さんが首から下げてるIDカードをササッと構築。 それを私も首にぶら下げニコッと笑えば、 「あなたはハローワーク(ここ)の職員さんでしたか。んーでも初めてお会いしましたね。僕、ほとんど毎日通ってるのに」 ちょっぴり首を傾げてるけど、職員さんだと勘違いしてくれました。 『たまたま会わなかっただけでしょう。そんな事よりお仕事探しですよ。私もお手伝いします。実はですね……あなたにピッタリの求人があるんです。ご案内しますからアチラの席に移動しませんか?』 ドギマギしながらそう言うと、彼は素直に私の後を着いてきます。 ここまで順調! このあとはウチの会社を猛プッシュの予定です。 さぁ、頑張りますよぉ!
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