第九章 霊媒師こぼれ話_エイミウの星の砂

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◆ ユリさんと庭に出ると、生者も死者も関係無しに沢山のヒト達がいた。 まず目に入ったのは、ユリさんのご家族と先代と瀬山さん。 瀬山さんの隣には視た事の無い、和服姿の綺麗な女性が立っている。 あの方は奥様だろうか……ああ、きっとそうに違いない。 二霊(ふたり)共、顔を寄せ合い楽しそうに笑っている……なんだかとても幸せそうだ。 それから。 その向こうには、真っ赤な髪を腰まで伸ばした筋肉質の女性が一霊(ひとり)。 あの方も会った事はないけれど、顔を視れば誰の家族かすぐに分かった。 なにせ顔がそっくりなのだ、特に目元は瓜二つ。 彫りが深くて黒目が大きいアーモンド形、清水誠のお母様で間違いはないだろう。 また、数えてみれば総勢27(にん)の屈強そうな男達もいるのだが、おそらくは黄泉の国の特殊部隊、清水母が率いる隊の部下の方々 “バッドアップル” の隊員達だ。 彼らの話はあの人から何度も聞いた。 霊力(ちから)も技術も群を抜き、誰より強くて誰より優しい霊達(ひとたち)なのだと。 それにしても……錚々たる顔ぶれと、ヒトの多さに少々気後れしてしまう。 ほんの数年前までは、友人なんて一人もいなくて休みの日には朝から部屋に閉じこもり、地図を眺めて過ごしていた。 此処最近ではあの人や美女達となら出掛ける事はあるけども、人数は私を含めてユリさん、弥生さん、マジョリカさんと四人が最大。 それだって最初の頃は緊張したしおかしな事も言ってしまった(美女達は笑い飛ばしてくれたけど)。 だのに、こんなに多くのヒトに囲まれ上手く話が出来るのか、またおかしな事を言わないか、とにかくそれが心配だった……が。 ユリさんに手を引かれ、藤田家の皆様とご挨拶を交わした時には、 『おぅ! 嬢ちゃんはユリの友達なんだってな!』←ユリさんのお爺様 『わぁ! 嬉しい! 初めて娘のお友達に会えました!』←ユリさんのお母様 『水渦(みうず)ちゃん、ユリちゃんと仲良くしてあげてねぇ』←ユリさんのお婆様 と、それはそれは優しい言葉をいただいたのだ。 私はそれが嬉しくて、それと同時にホッとして、誠心誠意の挨拶をさせていただき腰を折って頭を下げた。 正直……泣きそうだ。 ”小野坂 水渦(みうず)と付き合うな!” と、過去に何度も言われてきたのに、藤田家の皆様は真逆の事を笑顔で言う。 優しい友のご家族は、やっぱり優しい霊達(ひとたち)なんだ。
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