第九章 霊媒師こぼれ話_エイミウの星の砂

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◆ 佐知子さんから瀬山さんとの馴れ初めや、黄泉の国での暮らしの話を聞かせていただき楽しい時間を過ごしていると……ふと、今いる場所から少し離れた庭の中ほど、そこから聞こえる話す言葉が私の耳に飛び込んできた。 ____……ミウズがさぁ、 今のは……私の名前? そうだ、確かに ”水渦(みうず)” と言っていた。 名前が出たと言う事は私の話題が出たという事。 なんだろう、なんの話をしているのだろう。 面子的に悪口だとは思わないけど、それでも少し気になって……いや、とても気になり何度もチラチラ見ていると、そんな私に佐知子さんが気が付いた。 首を傾げる優しい(ひと)に、自分の話題が出ているようだと伝えると、事も無さげにふわりと笑い、”気になるのなら行ってみましょう” と、躊躇う私の手を取ったのだ。 …… ………… 庭の中ほど、そこにいたのは今日集まった女子供のほとんどだった。 その中心で私の名前が繰り返されていたのだが____ 『(わり)いけど、こればっかりは譲れねぇ! 水渦(みうず)が死んだらアタシのトコロに来させるから! 朋美サマ率いる黄泉の国の特殊部隊、”バッドアップル” に入隊してもらう! 水渦(みうず)はスゲェよ! 霊力(ちから)が強くてそれを生かす技術もあって、人の痛みが分かるヤツだと聞いている……って、ん? そんな話を誰に聞いたかって? そりゃあアレだよ、愚息と愛娘に聞いたんだ。2人が言うなら間違いねぇ! ま、実を言うと話を聞いて興味が湧いて、こないだコッソリ水渦(みうず)の現場を覗き視したんだ(テヘ♪)。でよ、実際にアタシの目で視て是非とも欲しいと思ったんだよね。だからよ、水渦(みうず)の死後は特殊部隊で決定だ!』 ____と、私の死後の身の振り方を私以上に力説するのは清水誠のお母様。 清水母、生前はプロレスラーでリングネームは ”バッドアップル”。 林檎のような真っ赤な髪がトレードマークの清水朋美さんだ。 彼女は現在、黄泉の国の特殊部隊で隊長をされてるそうで、私が死んだら入隊するのを望んでいる……っぽい(初耳)。 しかしまぁ、なんと言うかそっくりなのは顔だけではなかったか。 息子と同じ大きな声、手振り身振りのオーバーアクション。 そして、こうと決めたらひたすら前に突き進むのもそっくりだ。 知らなかった、清水誠のあの性格は母親譲りだったとは。 私の名前が出ていた理由が判明し、そういう事かと気が抜けた。 が、正直言って死んだ後の身の振り方を、今まで一度も考えた事が無い。 何かと色々欠けている私は日々勉強、生きるだけで精一杯だからだ。 とは言え、出来る出来ないは別としても、私なんぞを特殊部隊に望んでくれる気持ちがとてもありがたい。
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