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まずは河岸を変えなくてはいけません。
なるべく端っこに行きましょう。
この中、人がたくさんいますからねぇ。
気を付けないとこの子、1人でブツブツ言ってる変な人だと思われちゃう。
なんてったって私の姿はこの子以外に視えないから、その辺は配慮が必要です。
と、いうコトで。
選んだ場所は壁際から数十歩の相談コーナー。
その中でも最奥の端っこです。
近くの床には背の高い観葉植物(しかもモシャモシャ!)、少しは隠してくれるでしょう。
さて、机を挟んでコチラ側に私が座り、真向いのアチラ側に男の子です。
これからしっかりウチの会社をアッピールしちゃいますからねっ!
「よろしくおねがいします」
男の子はペコリと頭をさげました。
んま、礼儀正しい子。
『はいはい、こちらこそどうぞよろしくお願いします』
私もペコリとご挨拶、……ささ、始めましょうか。
まずは……と、ハローワークの職員さんが座る席、ここにデスクトップのパソコンがあります。
ウチの会社の求人情報、これを画面に出しましょう。
ふふふ……大丈夫、1人で出来ますよ。
だって私、こう視えてパソコンは得意ですから!
鼻歌交じりにキーボードに手を置いて、”株式会社おくりび” と入力しようとした、……のですが、
スカッ!
ん……?
ハッ!
そ、そうでした!
私、幽霊だからキーボードにさわれないんだったー!
どうしましょう!
霊力技で無理をすればキーくらい叩けるかもしれませんが、音が出ちゃうし光っちゃう!
下手したら壊しちゃうかもしれないし……!
こうなったら仕方ありません、この子に頼みましょう。
『ちょっと良いですか? 私、年寄りだからパソコンが苦手なんです。だから代わりにキーボード打ってくれません?』
秘儀!
”こんな時だけお年寄り!” の発動です。
「え? ああ、良いですよ。なんて打ちましょうか」
あっらー!
優しい子!
嫌な顔どころか笑顔じゃない!
『ありがとう。じゃあココに ”株式会社おくりび” って打ってくれますか? おくりびは平仮名で』
男の子はムコウの席から身を乗り出して打ってくれ、最後にエンターキーを押すと、ウチの会社の求人情報が表示されました。
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