第二章 霊媒師こぼれ話_持丸平蔵と清水誠ー1

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独身貴族を通した私は、したコトのないプロポーズの返事待ちの心境です。 ”僕、霊媒師になりたい!” 、良いお返事を今か今かと待ってましたが……残念。 そう簡単にはいかないみたいで、男の子は困った顔してこんなコトを言い出したのです。 「はぁ……もしも僕がこの先、幽霊で困ったら相談してみたいなと思いますが面接は受けません。さっきも言いましたが、僕、本当に霊感なんてないんです。この会社に行っても何もできません。せっかく紹介してもらって申し訳ないのですが……」 あぁん、もうっ! 受けてよぉ! ”霊感がない” ですって? ”何もできません” ですって? なにをおっしゃるウサギさん! バッチリ私と目を合わせ、こうしておしゃべりしてるじゃない! 幽霊相手に ”霊感なんてありません” と真面目な顔で言われても、コチラはトキメクだけですからっ! いやはやしかし。 本当になにも気づいてないのですねぇ。 私のコト、完全に生者だと思ってる。 チガウのに、生きてないのに、幽霊なのに、……こんな子、滅多にいませんよ。 おくりび(ウチ)の子達でさえ、こんな視え方しないのに。 ここで会ったが百年目、絶対にあきらめませんよぉ! 「そうですか。まあ、最初は自分に自信が持てなくて当たり前です。大丈夫ですよ。とりあえず会社面接に行ってみましょう。明日あたりご都合いかがですか?」 我ながら強引かとは思いましたが、彼がちっとも霊媒師に興味を持たず、焦りが出たのは否めません。 が、この焦りがまずかった。 自称 ”霊感ゼロの平凡男子” は、とうとう怒ってしまったのです。 「えっ!? ちょっと! 人の話を聞いてましたか!? 僕には霊感が無いから無理だと言ったでしょう!?」 フシャー! プンプンの飼い猫みたいな彼の怒りに、あやうく和みそうになりました。 たまに、おくりび(ウチ)の子達もケンカをするけど(主に女の子達が)、それに比べて迫力がたりません、可愛いモンです。 なのでもう、こうなったら強引なまま話を進めようと思います。 『いいえ、大丈夫です。あなたならきっとできます』 秘儀! ”話を聞かないお年寄り!” 力技で話を戻し、ここらでそろそろ、私自身が幽霊なのだと正体を明かすつもりでいたのだけれど、 「霊媒師なんてできませんと何度も言ってるじゃありませんか! これ以上話すことはありません、今日は帰ります」 男の子はプンプンすぎて、あろうことか席を立ち、背中を向けて帰ろうとしたのです!
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