第二章 霊媒師こぼれ話_持丸平蔵と清水誠ー1

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咄嗟に私も席を立ち、 「あぁ! そうおっしゃらないで! 私の話を最後まで聞いてください! 待って……!」 なんとしてでも引き留めたくて、背中に向かって手を伸ばした……次の瞬間。 「やめてください!(ピシャリッ!!)」 え…………? ピシャリ……?(手の甲ジワワーン……) え……? え……? 今……なにが起きたの……? 男の子が……私を叩いた……? ウソ……ウソウソウソ……ホント……? 生者が……? 死者の私を……? 素手で……? …… ………… え? え? えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? バクバクバクバクバク!! ドギマギなんてとっくに超えて、死して動かぬ心臓がバクバク言い出しました。 信じられない……この子、私を叩いたの! 死者である私を、実体のない私を、電気の集合体である霊体をっ!! 「あの、すみませんでした! あなたを叩くなんて、僕、本当にひどいことを……」   フシャーからショボーン。 男の子は半べそ顔であやまります。 が、しかし! 気にするコトはありませんよ! だって、だってぇ!  「私……驚きました! 私を叩きましたね……!? あなた! 私のこの手をピシャリと叩きましたね……!!」 頭の中はグルングルン。 霊体(からだ)はカァっと熱くなり、胸はバクバク鳴りっぱなしで、生きていたら卒倒するコト間違いなし(死者で良かった)。 どえらい子を視つけてしまった……まさかF市のハローワークにレジェンド級の逸材がいるなんて、誰が想像出来ようか! 男の子は何度もあやまり続けるけども、むしろ私はお礼を言いたい、よくぞ叩いてくれました! 『いいえ謝ることはありません! あなた自身が気が付いていないだけでスゴイ才能! スゴイ逸材だ!』 すべて話ましょう、彼の才能、私の正体、その両方を話し、是が非でも霊媒師にスカウトしたい!  と思いましたが、ココで緊急事態発生です。 まずいコトになりました。 男の子はまだ気づいていませんが、まわりの生者がザワザワとし始めて、チラチラこちらを見てるのです。 視えない人にしてみれば、男の子は誰もいない机に座って、1人でブツブツ言ってるだけのアブナイ子。 不審がられて然りです。 これはいけません、河岸を変えましょう。 新たな河岸は、ハローワーク(ここ)ではなくて、“おくりび” です! 『あなた、明日の10時に必ず会社に来てください! さっそく入社手続きをしましょう! もちろん霊媒師として! それではまた明日ね! 待ってますよ! 絶対来てくださいねーーッ!』 秘技! “言いたいコトだけ言ったらドロン!” こうしちゃあいられません! 帰りは電車を使わずに、瞬間移動で即帰社です!
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