第二章 霊媒師こぼれ話_持丸平蔵と清水誠ー2

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「んで? 今現在分かってる岡村君の情報は? 年とか前職とか、ケッコンしてるとかしてねぇとか、そういうの教えろよ」 ぬるいバトルに飽きた俺は、これから来る岡村君の話を振った。 ま、振らなくたって話すんだろうが、一応な、俺社長だし、面接だからよ。 前もって知っといた方が良いだろ。 『岡村君の情報ねぇ……ん、今分かっている事はそんなにないですよ。岡村英海(ひでみ)、××××年12月24日生まれの30才。住んでる所は東京都F市のアパートで1人暮らし……そのくらいです』 事務所の中をウロつくジジィはソワソワしながらそう言ったんだが、情報少ねぇな。 たったそれだけか? 「なんだ、ホントにチョットだな。霊視しなかったのかよ」 『してません。この情報はね、昨日ハローワークで岡村君が持っていた書類に書いてあったの。いくら知りたくても、本人の許可無く勝手に霊視は出来ませんからね』 「ま、確かに。本人来たら許可取って視せてもらえば良いやな。しっかしなぁ、昨日ジジィが言ってたコト。岡村君って霊体にさわれるんだろ? スッゲェよなぁ! なにもしなくても素手でさわれるなんてよ! そんなん、ウチの会社にもいねぇよ!」 『でしょー! しかもね、”さわれる” のレベルが尋常じゃないの! ”かすかにさわれる” とか、”けっこうさわれる” なんてもんじゃない。”すっごいさわれる!” なんだから! 昨日、私の手を叩いた時も、”ピシャリ” と良い音させてねぇ!』 やっぱしテンション(たけ)えな。 ジジィ、胸を押さえて顔を真っ赤にしてやがる。 オイ、大丈夫かよ。 いくらユーレーっつったって、年なんだから無理すんな。 「どうやら霊力(ちから)は充分すぎる程ありそうだな。んで? 対人能力はどうなんだよ」 霊体への物理干渉。 コレが出来るって事は、相当霊力(ちから)を持ってるはずだ。 でなきゃ干渉出来ねぇからな。 でも霊力(ちから)だけじゃダメだ、プラスアルファが必要なんだ。 それを聞くとジジィは、 『んー? とっても優しい子でしたよー。いきなり話しかけてもイヤな顔ひとつしないし』 なんだよ。 急にトーンが下がったな。 そこら辺は曖昧なのか? 「はぁん、そうなんだ。優しい子ねぇ。でもよ、優しいだけじゃ霊媒師は勤まらねぇぜ? 霊の中には性質(たち)(わり)いのもウジャウジャいるんだ。”霊にさわれます、でも凄まれてビビリました、強く出れません、怖いから言いなりになます”、これじゃあ仕事にならねぇからな」 ____ダイヤの原石視つけちゃった! そう言って、はしゃぐジジィには(わり)いけど、これはマジで大事な事だ。 ましてや、霊に物理干渉出来るとなれば、悪霊に凄まれるだけじゃ済まねぇ。 生者同士のケンカと一緒でタコ殴りにされちまう。 優しさも必要だがよ、霊媒師をやるんなら気が強いくらいで丁度良い。 それと対人能力な。 凄まれようと、脅されようと、泣き落としをされようと、慌てないで、冷静に対応出来なきゃダメなんだ。
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