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◆
____コンコン
控え目な音の後、一拍置いて扉が開くと細身の男が立っていた。
男は事務所の中に目線を飛ばし、俺らを見ると頭を下げて、
「失礼します」
と静かに一歩前に出る。
この子が岡村君か……へぇ。
なんつーか……どこにでもいそうな普通の男だな。
背は高くもねぇが低くもねぇ。
痩せ型で筋肉質とは言い難い。
スーツは紺、靴とカバンは無難な黒色。
頭は茶髪で目立つけど、染めた感じじゃなさそうだ(やたらツヤツヤしてるしよ)。
全体的にすげぇ地味、モブ感がハンパねぇ。
…………えっと……、この子ホントに霊力者?
地味だし、気も弱そうだし、霊力者って……もっとこう……なぁ。
ウチの会社の連中みてぇに、気が強そうとか、我が強そうとか、すぐに喧嘩を始めそうとか、そういうの一切ねぇじゃん。
こんなんでダイジョブか?
ジジィには悪いが、適正なければ採用はしねぇから。
なんてコトを考えてると、
『良く来てくれたねぇ!』
ハイテンションの幽霊が転がるみてぇに割り込んできて、岡村君にササッと右手を差し出した。
すぐに分かった、こりゃアレだ、握手を求めて手を出したんだ。
マジか、いきなりコレか。
____岡村君はね、幽霊にさわれるのっ!
霊体への物理干渉。
ジジィが1番騒いでたヤツ。
どんなに霊力が強くても、小細工無しに干渉は難しい。
そんな霊媒師、俺は見た事がねぇ。
だがしかし、ジジィが言うには岡村君はそれが出来ると、だから是非ともウチの会社に迎えたいと、……まぁ、にわかには信じ難いが、ジジィは嘘は言わねぇからな。
とりあえず、俺のこの目で確かめて……って、うぁあ!?
ヤ、ヤベェ……!!
あやうく大声出すトコだった……!!
俺の目の前。
岡村君は自分のスーツで手を拭いて、それでよ、ジジィとよ、ガッチリ握手をしやがった!
差し出されたジジィの手のひら、それをしっかり握ってるんだ……!
信じてなかった訳じゃねぇが…………マジで……?
見間違いじゃあ……ねぇよな?
うまい具合に手を合わせてるだけ……とも……チガウよな?
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