第二章 霊媒師こぼれ話_持丸平蔵と清水誠ー2

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そしていよいよ。 印も組まねぇ、言霊も唱えねぇ。 ノーモーションのジジィの霊視が始まった。 …… ………… 『……大学卒業後……新卒で××通信社に入ったんだ……そこで3年間……営業職を……』 ____前職は営業か、……客応対は問題なさそうだな。 つったって営業も色々あるから、もうちっと具体的な話が聞きてぇ。 『ああ大変だったねぇ。取引先の会社さんで……クレームかな? すごい怒鳴られてるじゃないか……ああ、でも……うまいね、すっかり丸く収めてさらなる契約を取っている……』 ____マジか! 怒鳴られるようなクレームを自己完結だけじゃねぇ! 同じ客から契約まで取ったのかよ……! やるじゃねぇか……ヤベェ、ガラにもなくドキドキしてきた! 『お、その後の5年間は同じ会社のお客様相談センターに配置換えか……まあ、あれだけ客あしらいがうまいなら適所だが……おぉ……! 去年主任になったんだねぇ……おめでとう……あ、でも……あら……あららら……会社が不渡り出しちゃったのか……それで……××通信社……頑張ったけど……潰れちゃったんだねぇ……そうかそうか……』 ____”お客様相談センター” キターーーーーー!! お客様相談センターって要はクレームメインの応対部署だろ? マジか……マジかよ……しかもだ、前の会社は倒産、それはつまり、クレーム対応が嫌になって辞めたんじゃねぇって事だ! スゲェ……こりゃスゲェ……霊力(ちから)、優しさ、対人、霊媒師としての ”猪、鹿、蝶“ が揃ってるかねぇかぁぁ! ドッドッドッドッ!! ヤベェ……ヤベェ……! なんだこの胸の高鳴り……! 俺、もうジジィのコト言えねぇじゃねぇか……! 『今の聞いた? 清水君』 クッソ……! ジジィのヤローすっげー得意な顔してやがる……! だがしかし、……完敗だ、今回ばかりは俺も心底浮かれてる……! 「聞きましたよ、先代。お客様相談って要はクレーム処理班ですよねぇ? という事は対人スキルもあるってことですよ」 目と目で通じ合う、というのはこういうコトを言うんだな。 俺とジジィは互いの目線をぶつけ合い、沸き立つ笑いを抑える事が出来なかった。 『そうだねぇ。ふふふふ……』←ほっぺ真っ赤で得意顔 「そうですねぇ。ふふふふ……」←超絶イケメン(自己申告) 「えと…………………………」←岡村君、ポカーン おっと、こうしちゃいられねぇ! この子の気持ちが変わらないよう、ガンガン話を進めるぜ!
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