第三章 霊媒師こぼれ話_エイミーと大福

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◆ 「ささ、ココが僕のオウチだよ。ワンルームのアパートだから狭いけど、今日から大福のオウチでもあるんだ。だから遠慮なく好きに過ごしてね」 言いなからドキドキした。 一人暮らしも早8年。 あんまりモノは置かない方で、部屋の中はシンプルを通り越し、限りなく質素に近い。 飾り気も味気もないワンルーム、そこにまさかの猫様降臨! 平凡な僕の人生、ビックイベント発生だ。 で、 大福は長い尻尾をフリフリさせて、短い廊下をスンスンスンスン、匂いを嗅ぎながら進んでいた。 これはアレだ、“ねこねこチェック” だ。 猫にとって新しい環境、新しい場所、新しい物……そういうモノは、まず最初に厳しいチェックを入れる。 匂いを嗅いだり、必要ならばちっちゃなアンヨでチョイチョイさわって、危険はないか、不快なモノでないか、猫自身が視極めるのだ。 ど、どうだろ……この部屋は “ねこねこチェック” に合格をもらえるだろうか……? 汚くはないはずだ。 掃除と洗濯、これは家を出る前に済ませてある。 部屋の床はフローリングで、掃除機と、それからモップもかけたしさ。 ミニキッチンのシンクは空っぽ、洗い物も溜めてない。 ガスコンロは使ってすぐにキレイにしてるし、僕はタバコを吸わないから煙の臭いももちろんしない。 どうかな……どうだろ……チェック、合格出来るかな……?  ダイジョブかな……?  “ココキライにゃ!” なんて言われないかな……? 心配だよ……どうかひとつ、この部屋をお姫様が気に入ってくれますように。 スンスンスンスン、 猫又はテチテチ歩いて廊下を進む。 途中、トイレとお風呂を視てまわったが、どうやらそこは合格みたいで、すぐに出てきて歩き出す。 お次はキッチン。 床からピョンとひとっ飛び、台に上がると振り向いて、僕に『うなぁ』と鳴いたんだ。 「はい! ただいまお出しします!」 大福が何を言ったかすぐに分かって、水道のレバーを上げた。 するとお水がチョロチョロ流れて、姫は首をにゅーんと伸ばして美味しそうに飲みだした。 んべんべんべんべ……ぷっはー! 『うにゅ、』←”うむ” と思われる。 お水をたらふく飲んだあとはチェック再開。 タンッ! と床に飛び降りて、テチテチ歩いてお次は部屋だ。 部屋の入口、スゥっと息を吸いこんでから…… スンスンスンスン、 端から端まで匂いを嗅いで、そのたび出るのはカワイイ鳴き声。 『うにゅ、うななな』←”うむ、ごうかく” と思われる。 次々いただく ”ごうかく” にココロがオドル、ホッとしてホントに小躍りしたくなる、…………と、ここで、……どうしたんだ? 大福の動きが止まった。 や、やばい、”ねこねこチェック” に引っ掛かってしまったか?
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