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◆
「ささ、ココが僕のオウチだよ。ワンルームのアパートだから狭いけど、今日から大福のオウチでもあるんだ。だから遠慮なく好きに過ごしてね」
言いなからドキドキした。
一人暮らしも早8年。
あんまりモノは置かない方で、部屋の中はシンプルを通り越し、限りなく質素に近い。
飾り気も味気もないワンルーム、そこにまさかの猫様降臨!
平凡な僕の人生、ビックイベント発生だ。
で、
大福は長い尻尾をフリフリさせて、短い廊下をスンスンスンスン、匂いを嗅ぎながら進んでいた。
これはアレだ、“ねこねこチェック” だ。
猫にとって新しい環境、新しい場所、新しい物……そういうモノは、まず最初に厳しいチェックを入れる。
匂いを嗅いだり、必要ならばちっちゃなアンヨでチョイチョイさわって、危険はないか、不快なモノでないか、猫自身が視極めるのだ。
ど、どうだろ……この部屋は “ねこねこチェック” に合格をもらえるだろうか……?
汚くはないはずだ。
掃除と洗濯、これは家を出る前に済ませてある。
部屋の床はフローリングで、掃除機と、それからモップもかけたしさ。
ミニキッチンのシンクは空っぽ、洗い物も溜めてない。
ガスコンロは使ってすぐにキレイにしてるし、僕はタバコを吸わないから煙の臭いももちろんしない。
どうかな……どうだろ……チェック、合格出来るかな……?
ダイジョブかな……?
“ココキライにゃ!” なんて言われないかな……?
心配だよ……どうかひとつ、この部屋をお姫様が気に入ってくれますように。
スンスンスンスン、
猫又はテチテチ歩いて廊下を進む。
途中、トイレとお風呂を視てまわったが、どうやらそこは合格みたいで、すぐに出てきて歩き出す。
お次はキッチン。
床からピョンとひとっ飛び、台に上がると振り向いて、僕に『うなぁ』と鳴いたんだ。
「はい! ただいまお出しします!」
大福が何を言ったかすぐに分かって、水道のレバーを上げた。
するとお水がチョロチョロ流れて、姫は首をにゅーんと伸ばして美味しそうに飲みだした。
んべんべんべんべ……ぷっはー!
『うにゅ、』←”うむ” と思われる。
お水をたらふく飲んだあとはチェック再開。
タンッ! と床に飛び降りて、テチテチ歩いてお次は部屋だ。
部屋の入口、スゥっと息を吸いこんでから……
スンスンスンスン、
端から端まで匂いを嗅いで、そのたび出るのはカワイイ鳴き声。
『うにゅ、うななな』←”うむ、ごうかく” と思われる。
次々いただく ”ごうかく” にココロがオドル、ホッとしてホントに小躍りしたくなる、…………と、ここで、……どうしたんだ?
大福の動きが止まった。
や、やばい、”ねこねこチェック” に引っ掛かってしまったか?
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