第三章 霊媒師こぼれ話_エイミーと大福

4/8
前へ
/372ページ
次へ
「だ、大福、どうしたの? 気になるトコがあるの?」 聞いてみたけど、お姫はそれには答えなかった。 床に座って顎を上げ、なにかをジッと視つめてる……なにを視てるんだ? 目線を追って視てみれば……写真……、写真を視てるのか? 木目の低いテレビ台。 そこにはテレビはもちろんだけど、数枚の写真も飾ってるんだ。 それは僕のカノジョの写真……ではなく(いないし)、実家で飼ってる茶トラのきなこと(12才の熟女さま)、昔飼ってた歴代の猫達だ。 どの仔も可愛く賢くて、大事なウチの家族なの。 白猫黒猫、パンダ猫に三毛猫も、トラシリーズは ”茶トラ” に ”キジトラ”、”サバトラ” と、それから……黒と橙たまに白、斑の模様の小さな猫もいたんだよ。 きなこ以外は亡くなって、今はきっとあの世でさ、僕達家族が迎えに来るのを待っててくれてるはずなんだ(と、信じてる)。 大福が視つめているのはその仔達の写真だ。 とても、とても熱心に眺めてる。 もしかして、同じ猫だから興味があるのかな。 「この写真、気になる? みんな可愛いでしょう。この仔達はね、昔、僕の実家で一緒に暮らした猫達なんだ」 お姫の頭をナデナデしながらそう言うと、グィンと霊体(からだ)を斜めに捻って僕を視て、 『うなな……?』←そうなの? と小さく鳴いた。 「うん、そうだよ。ウチね家族揃って猫が大好きなんだ。小さい頃からずっと猫と暮らしてた」 『……』←…… 「大事な大事な家族だから、こうして写真を飾ってるんだ。この仔達の名前はね、”しらたま” でしょ、”くろたま”でしょ、それから ”サン” と ”シャチ” と ”茶々丸” ”キジ丸” ”サバ丸” 、あとこのちっちゃい仔猫は ”おはぎ” って言うの」 『うなぁ……うなぁ……』←うわぁ……うわぁ…… 「あ、あれ? なんか驚いてる? もしかして、ヘンな名前かな?」 そうなのよ、僕としては良い名前だと思うけど、たまにね、ヘンな名前ー! って笑われちゃうの。 そうかなぁ? ヘンかなぁ? でもね、猫達も気に入ってたよ。
/372ページ

最初のコメントを投稿しよう!

474人が本棚に入れています
本棚に追加