第三章 霊媒師こぼれ話_エイミーと大福

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嬉しくて嬉しすぎて、ぶちゅうに抱っこに頬ずりに、毛皮をナデナデしっぽをシュルシュル、三角お耳を指でつまんで感涙し、ちっちゃなオハナを人差し指でチョンチョンチョンチョン……鼻ドリブルをきめてみたりと。 完全なる僕得で、フィーバータイムにウハウハだった。 「そうだ大福! さっきスーパーで猫に大人気のオヤツ、”ちゅるー” も買ったんだ! ”ちゅるー” 食べたコトある? 色んな味を買ってみたから、ひとつひとつ試してみよう。好きな味があったら教えてね。今度はそれをいっぱい買うから、……って、…………姫さま……寝ちゃった」 気付けば寝落ち。 大福はまるで電池が切れたように、床に伸びて眠ってる。 「あーあー、こんな硬い所で寝たら霊体(からだ)が痛くなっちゃうよ」 小さな声で呟いて、眠るお姫を起こさないよう注意しながら抱き上げた。 寝るならコッチ。 液体みたいにテロンとなってる猫又を、ベッドに運んで静かに降ろす。 すよー ぷーぷー すよー ぷーぷー カ、カワイイ……! 大福ったら寝息と一緒にちっちゃなオハナを鳴らしてる。 ぷーぷー言って愛しいったらないわ。 僕は床に膝をつき、眠るお姫を眺めてた。 猫は基本眠りが浅い、浅い分だけ1日何度も眠るんだ。 でも……今の大福は眠りが深そうだな。 抱っこで運んでも起きなかったし、こうしてそばで眺めていたって起きやしない。 疲れてたのかな……なんとなくそう思った。 人と違って毛皮だから、顔色が良いとか悪いとか分からない。 だけど、もしも疲れているのなら、好きなだけ眠ってほしい。 寝ている間はナデナデしないしウルサクしない。 大福がよく眠れるようにしたいんだ。 この仔……なんで神社でイチニャンだけでいたのかな。 さっき外で聞いた時、神社に住んでる訳でもないし、家族も仲間もいなくって、帰る場所は特に無いと言っていた。 野良猫又……だったのかな、元は誰かと住んでいたのかな、じゃあなんで今はイチニャンなのかな。 分からないや、分からないけど………………、 すよー ぷぷぷぷー すよー ぷぶぶぷー すよー……ふごっ、ふごふごふごふご…… ぷーぷーぷー ピンクのちっちゃいオハナから、謎音(ナゾオト)立てて眠る猫又。 この仔は僕を選んでくれた。 今わかるのはそれだけだ。 なにがあったか知らないけども、これから先は僕を選んで良かったと、そう思ってもらえるように、一生、……ううん、その後だって、ずっとずっと頑張るつもりだ。
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