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梅雨も明けた夏本番。
7月後半のこの時期は、炎天下を歩くだけで汗だくになる。
そんな中、今日は朝一番で会社を出発。
お得意様をハシゴして外回りから戻った僕は、玄関扉をくぐった瞬間、社内のエアコンにホッと息を吐いた。
「あぁ……涼しい……最高だぁ……」
ブツブツと独り言ちてヨロヨロ歩き、まずはエレベーターに乗り込んだ。
僕の所属は営業一課で3階だから、当然、階数ボタンは ”3階” を連打して、課に戻ったらすぐさま仕事の続きを始め……なぁんてコト、するワケないぴょーん!
こんなに暑い中、頑張って2つも契約を取ってきたんだ。
少しは休憩させてくれーっ!
という事で、僕は迷わず ”2階” のボタンをポチッとしたのだ。
チン!
エレベーターの扉が開いて、そのまま真っすぐ歩いて行けば右手側にオープンタイプの休憩スペースがある。
そう広くはないけれど、大きな窓から光が差し込む憩いの場所だ。
僕を含めみんなは時々、コッソリ課を抜け出しちゃあ10分程度の休憩を取るのだが、見つかったとしてそれを咎める上司はいない。
そりゃそうだ。
だって、上司もしょっちゅうココに来るのだから。
テクテクと数メートル。
憩いの場に足を踏み入れ覗いてみると……誰もいなくて貸し切り状態。
とりあえず自販機の前に立ち、ペットボトルのジャスミンティーのボタンを押した。
ガコンッ!
音がして、受取口からそれを取り出し腰に手をあてグイグイ飲む、飲む、飲むー!
そして、
「おいしー!」
人がいないのを良いコトに、大きな声で感想を述べてみた。
はぁぁ……生き返るわぁ……疲れてるとジャスミンティーが五臓六腑に染みわたるぅぅ。
……と、そんな時だった。
背後から、僕の背中を誰かがツンツン突っついたんだ。
あ……っと思って振り向くと、
「ひーでみ、お帰り。外は暑かったでしょう?」
レモン色のワンピース、薄青のシンプルカーディガン。
足元はリボンのついた可愛いサンダル。
肩まで伸びたサラサラ髪はふわっとエアリー、ミルクティーと同じ色。
リスの子みたいにあどけなく、黒目がちのつぶらな瞳で僕を見るのは……
「杏ちゃん、」
付き合って3年になる、同い年の僕の彼女。
榎本杏ちゃんだったのだ。
2022/5/3 挿絵を差し替えました。
![ff290827-b7ed-46b2-97f1-219287c3d309](https://img.estar.jp/public/user_upload/ff290827-b7ed-46b2-97f1-219287c3d309.jpg?width=800&format=jpg)
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