第四章 霊媒師こぼれ話_エイミーの元カノ

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杏ちゃんはまわりをキョロキョロ。 そして誰もいないのを確認すると……恥ずかしそうに、自分の指を僕の指に絡ませた。 ああ……なんて可愛い。 「英海(ひでみ)、おつかれさまぁ。今日は何件契約とれたの?」 きゅるんと小さく小首を傾げる杏ちゃん。 付き合って3年なのに、可愛い仕草にいまだにドキドキしてしまう。 「今日は2件。前々からご提案していたお客様達だったんだけど、やっと良いお返事をいただけたんだ」 「わぁ! おめでとう! 英海(ひでみ)はすごいよね。先月も売り上げトップだったじゃない」 「す、すごくないよ。お客様が良い人達で、僕の話を聞いてくれたんだ。ありがたいと思ってる」 「またまたぁ、謙遜しちゃって。みんな言ってるよ? ”岡村くんは人たらし” だって。人たらしだからお客様にも好かれるけど、他の営業からやっかみも受けない、得な性格だよねぇって」 「そ、そんなコト言われてるの? ま、参ったな、本当にチガウんだ。僕はみんなに助けてもらってるの。それは、えっと……杏ちゃんにもね」 どさくさ紛れに言ってみた。 だって、僕は杏ちゃんの笑顔にいつも励まされているんだもの。 「英海(ひでみ)……うふふ、ありがと。杏、英海(ひでみ)のそういうトコロが大好きなんだぁ。あ、そうだ! 今夜の約束忘れてないよね? 一緒にイタリアンのお店に行くって言ったでしょう?」 あ、ヤバ……そうだった。 忙しくて忘れてたけど……忘れてたとは言えないや。 僕は大げさに頷きながら、 「も、もちろん! だ、だけどゴメン。予約……入れるの忘れてた」 と、ごまかしてみた。 すると杏ちゃんは、 「あぁ! その顔、その言い方、本当は忘れてたんでしょう! 約束のイタリアンは今夜だよぉ。んも、今言っておいて良かったぁ。ぜーったいに行きますからね! あとは予約かぁ……仕方ない、杏が代わりに入れとくよ。でも、今日の今日じゃ予約取れないかも。ダメだったら……街を歩いて最初に目に入ったお店に入ろうか、好き嫌いは言わせませんよ?」 なんでもお見通し、でもって怒りもせずにフォローまでしてくれたんだ。 「う、うん! ごめんね、ありがとね。そのかわり今夜はぜーんぶ僕がごちそうするから、なんでも好きなだけ食べて!」 「本当? やったぁ! じゃあケーキも食べたい! あ、でもな、新宿に新しいジェラートのお店が出来たみたいなの。どっちにしよう……迷う……」
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