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可愛いなぁ、真剣に悩んじゃって。
杏ちゃんは甘い物が大好きだよね。
僕もおんなじ、ケーキもジェラートも大好きだから決められないや。
だったらさ、
「迷うなら両方食べたら良いじゃない」
「りょ、両方!? そ、そんなに食べたら太っちゃうよぉ……でも食べたいなぁ……んー……あっ、良いコト考えた! じゃあ2人でシェアしようよ! それなら両方食べられる」
「シェアか、良いね。そうしよう。それとね、杏ちゃんは太るとか気にしなくて良いんだよ。スリムな杏ちゃんも可愛いけど、ぽっちゃりしたって可愛いもの」
本当にそうだ。
杏ちゃんならどっちでも可愛い。
そしてたぶん、年をとっても可愛さは変わらない。
「……そうなの?」
「うん」
「杏が太ってもキライにならない?」
「なる訳ないよ」
「どっちも好き?」
「うん」
「……じゃあ、”うん” じゃなくて ”好き” って言って?」
「えぇ! い、今ココで? 会社だよ?」
「会社でも、今ココで。ほらぁ、早くしないと人が来ちゃうよ?」
「え、え、え、で、でも……(キョロキョロ) 」
「………………(ジーーー)」
「あ、杏ちゃん、……す、す、す、す……(モタモタモタ)ダ、ダメだ……照れちゃって言えないよ。ね、ねぇ、いつものアレでも良い?」
「えぇー、アレー? ……んもうぉ、良いよ。じゃあアレでガマンしてあげる」
「あ、ありがと、ヘタレでごめんね。じゃ、じゃあ言うよ? 杏ちゃん、す、す、す、すき焼き!」
「…………ぷっ! あははは! 英海、顔が真っ赤だよ? でもアリガト。杏もすき焼き! じゃあ、杏はそろそろ戻るね。窓から英海が見えたから抜け出してきちゃったの。予約入れとくから、またあとでね」
ばいばい____
と小さな手をフリフリさせた、杏ちゃんの背中を見送っていた。
時間にすれば10分もないやりとり。
だけど僕はすっかり元気になっていた。
外回りの疲れも吹っ飛び、疲労が溶けてやる気になった。
「さて、退社時間まで残り2時間もないや。頑張って仕事を片付けよう。それが終われば杏ちゃんとデートだ!」
独り言ちてカバンを持って。
僕は営業一課のある3階まで、階段で一気に駆け上がったのだ。
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