第四章 霊媒師こぼれ話_エイミーの元カノ

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可愛いなぁ、真剣に悩んじゃって。 杏ちゃんは甘い物が大好きだよね。 僕もおんなじ、ケーキもジェラートも大好きだから決められないや。 だったらさ、 「迷うなら両方食べたら良いじゃない」 「りょ、両方!? そ、そんなに食べたら太っちゃうよぉ……でも食べたいなぁ……んー……あっ、良いコト考えた! じゃあ2人でシェアしようよ! それなら両方食べられる」 「シェアか、良いね。そうしよう。それとね、杏ちゃんは太るとか気にしなくて良いんだよ。スリムな杏ちゃんも可愛いけど、ぽっちゃりしたって可愛いもの」 本当にそうだ。 杏ちゃんならどっちでも可愛い。 そしてたぶん、年をとっても可愛さは変わらない。 「……そうなの?」 「うん」 「杏が太ってもキライにならない?」 「なる訳ないよ」 「どっちも好き?」 「うん」 「……じゃあ、”うん” じゃなくて ”好き” って言って?」 「えぇ! い、今ココで? 会社だよ?」 「会社でも、今ココで。ほらぁ、早くしないと人が来ちゃうよ?」 「え、え、え、で、でも……(キョロキョロ) 」 「………………(ジーーー)」 「あ、杏ちゃん、……す、す、す、す……(モタモタモタ)ダ、ダメだ……照れちゃって言えないよ。ね、ねぇ、いつものアレ(・・)でも良い?」 「えぇー、アレー(・・・)? ……んもうぉ、良いよ。じゃあアレ(・・)でガマンしてあげる」 「あ、ありがと、ヘタレでごめんね。じゃ、じゃあ言うよ? 杏ちゃん、す、す、す、すき焼き!」 「…………ぷっ! あははは! 英海(ひでみ)、顔が真っ赤だよ? でもアリガト。杏もすき焼き! じゃあ、杏はそろそろ戻るね。窓から英海(ひでみ)が見えたから抜け出してきちゃったの。予約入れとくから、またあとでね」 ばいばい____ と小さな手をフリフリさせた、杏ちゃんの背中を見送っていた。 時間にすれば10分もないやりとり。 だけど僕はすっかり元気になっていた。 外回りの疲れも吹っ飛び、疲労が溶けてやる気になった。 「さて、退社時間まで残り2時間もないや。頑張って仕事を片付けよう。それが終われば杏ちゃんとデートだ!」 独り言ちてカバンを持って。 僕は営業一課のある3階まで、階段で一気に駆け上がったのだ。
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