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「なに言ってんの。五十嵐こそサボリじゃないか。僕はサボリじゃなくて休憩。もーさー、仕事が溜まっていくらやっても終わらないの。そのうち集中力切れちゃて、それでココに来たんだ」
自販機でジャスミンティーをポチッとしたあと、蓋を開けてグイグイ飲んでそう言うと、
「あー、ワカル。そういう時は無理しないで休んだ方が良いんだよ。でないとミスる」
「さっすがぁ! 分かってるねぇ!」
これが同期の気楽さか。
冗談言って笑い合って、楽しい時間を過ごしていたが、ココでふと五十嵐が言葉を止めた。
「ん? どした? もう戻る?」
時間でも気になったかと聞いてみると、「ああ、うん……」と歯切れが悪い。
もしかして、悩み事でもあるのかな?
それなら聞くよ、どうしたの?
「……これ、俺の口から言って良いのか分からないんだけど……あ、あのさ、最近杏ちゃん、変わった様子はない?」
え……?
なにそれ、どういう意味……?
「えっと……特にないと思うけど……昨日も会ったし、いつも通りの杏ちゃんだったよ?」
「…………そうか、……ん、それなら……いっか」
「ちょ、なに? そこで止めないでよ、気になるよ!」
言いにくそうに視線を逸らす五十嵐に、僕は必死に食い下がる。
なに? 杏ちゃんになにかあったの?
五十嵐は渋い顔してためらった後、声を潜めてこう言ったんだ。
「俺のカノジョ、杏ちゃんと同じ部署じゃんか。それで、その……カノジョから聞いたんだけど……最近の杏ちゃん、部署の中で浮いてるっつーか、ちょっと色々あったみたいで……うん、お昼も1人で食べてるみたいでさ」
「え……そうなの……? そんな事、一言も言ってなかったのに」
「……そっか、岡村は知らなかったんだな……」
「うん……ぜんぜん……ねぇ、その話、詳しく教えてくれない?」
「あ、ああ。でも俺も、カノジョから聞いた話しか知らないぞ」
「良い、それで良いから教えて、」
まさかとは思うけど……杏ちゃん、いじめにあってるとかじゃ……ないよね。
杏ちゃんは可愛いし大人しい子だから……心配だよ。
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