第四章 霊媒師こぼれ話_エイミーの元カノ

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◆ 杏ちゃんの事が気になりつつも、時刻はそろそろ20時になる。 溜まった仕事を片付ける為、途中でパンをかじりながらの残業中だ。 今日はずっと会社にいたから、大体の整理はついた。 報告書はぜんぶ終えたし、見積書も作成済だし、お客様へのお手紙も書き終えた。 あとは、明日の午後にお伺いする瀧澤建設様にメールを打ったら……うん、終わりにしよう。 たぶんだけど……明日、瀧澤様のトコロに行ったら畑仕事をさせられる。 あそこの会社は敷地の中の端っこに、家庭菜園があるんだ。 その菜園はうんと広くて、色んな野菜を育てているの。 畑の世話は主に奥様。 あとは、手の空いた社員さんが入れ替わり立ち代わりお手伝いをしてるんだけど、その様子を見ているうちに……ははは、いつの間にか僕も手伝うコトになっちゃったのよね。 商談もせず、畑の土を耕してお水を撒くの。 これがけっこう楽しいのよ。 帰りに野菜も持たせてくれるし(実は楽しみだったりする)。 だから着替えも用意しなくちゃ。 さすがにスーツじゃ汚れるし動きにくい。 うん、そうだ、明日に備えてもう帰ろう。 帰ったら簡単にゴハンを食べて早く寝るんだ。 暑い真夏の畑仕事、寝不足じゃあキツイもん。 机の上を片付けてパソコンをシャットダウン。 まだ残ってる部署の上司に「お先です」と挨拶をして部屋を出た。 ああ、この解放感がたまらない。 杏ちゃんには……家に帰ったら電話をしてみよう。 それで、さりげなく話を聞き出すんだ。 五十嵐の話によれば、杏ちゃんは部署の中で浮いていると言っていた。 なにが原因なんだろう? 杏ちゃんは優しくて可愛くて……とっても良い子なんだ。 やっぱり……可愛いから嫉妬されてるとか? これは決してカレシの欲目じゃなくってさ、杏ちゃんは本当に可愛いの。 同期の中でも一番人気だったんだ。 入社したての新人研修。 あの時もすごかった。 みんな杏ちゃんと話したがって、いつもまわりに人がいた。 僕はと言うと……その輪に入る勇気もなくて、五十嵐と男同士でくだらない話をしてた。 研修が終わってさ、みんなそれぞれ配置が決まって、僕は今いる営業一課に配属された。 初めての会社勤め、初めての営業。 右も左もわからなくって、がむしゃらに頑張り続けた半年後。 僕は営業一課で売り上げ成績第三位に紛れ込んだんだ。 あれは……本気でまぐれだった。 僕のついたお客様がたまたま良い人だったのと、それまで営業トップの方がご結婚で退職されて、その分繰り上げになっただけのこと。 でも……あれがなかったら、僕と杏ちゃんは付き合っていなかったと思う。
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