第四章 霊媒師こぼれ話_エイミーの元カノ

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◆ 会社のある東京都N区から僕の住んでるF市までは電車でだいたい45分。 駅に着いたらアパートまでは歩いて5分の近さだけれど、その前に、足をのばしてスーパーに立ち寄った。 疲れているけど頑張らないと、食料は食べつくしちゃって家にはなんにもないからね。 …… ………… スーパーからの戦利品。 夜の時間はお得なセールで、うっかり色々買ってしまった。 エコバックをパンパンに膨らませ、鍵を取り出しドアを開け、 「ただいまぁ、」 なんて言ってみる。 一人暮らしの淋しいアパート。 誰もいないし部屋は真っ暗、それでもついつい独り言ち、手探りで電気をつけた。 「あー、帰ってきたー。やっぱり家に着くとホッとするな」 言いながらテレビを着けてカーテンを閉める。 スーツをポイポイ脱ぎ散らかして、楽な部屋着に早着替え。 着替えが終われば戦利品の袋を持って、中身を分けてしまってく。 これは冷蔵庫、こっちは冷凍庫、それからこれは棚の中。 今夜はナッツが安かった。 身体に良いから2袋も買っちゃったよ。 牛乳重かったな、でもね、これがないとカフェオレが作れない。 それで最後は……コレ! お弁当を買っちゃったんだ! 自炊しないでお弁当、手抜きだなぁと思うけどたまには良いよね。 だって安くて美味しいし、食べた後は洗い物もないなんてサイコー! 今日はね、デスクワークを頑張ったからご褒美だ。 …… ………… ……………… 「ごちそうさまでしたぁ! ああ、おなかいっぱい! 幸せぇぇ!」 おなかをさすってお茶を飲む。 つけっぱなしのテレビの中ではバンドが歌を歌ってて、あ……この曲、杏ちゃんが好きなやつだと思い出す。 昼間、五十嵐から聞いた事が本当なら、杏ちゃんは今辛い状況なはずだ。 部署の中で浮いている、その原因はなんだろう? 杏ちゃん、僕になんにも言わないから……気づいてあげられなくてごめんね。 電話、……今してみようかな。 時間は22時を過ぎた所で、この時間なら起きてるはずだ。 本当は会って話したい、だから明日でもいいのかなって思うけど、僕の方が心配なんだ。 スマホの画面、杏ちゃんのアドレスをタップした。 呼び出し音が1回、2回、3回4回、……お風呂かな? と思ったところで声が聞こえた。 ____英海(ひでみ)?  「あ、出てくれた! 良かったぁ。ごめんね、遅い時間に。今少し話しても平気?」 ____うん、ダイジョウブだよ。杏もね、英海(ひでみ)とお話したいなぁって思ってたの、 「ほ、ほんとう? ……ありがと、杏ちゃんは優しいね」 さぁ、なんて言って聞き出そう。
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