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え……っと……どういう事……?
一旦壁から顔を引っ込め、今見たものを頭の中で整理する。
まず……茉奈ちゃんが怒ってた。
誰に?
病休とったその日のうちに元気な姿をSNSにアップする問題児にだ。
で、その問題児が問題なんだ。
トライアゲイン。
僕はソォォォっと壁から顔を出してみた。
すると……ああ……やっぱりそうだ、見間違いじゃなかったよ。
怒りでワナワナ震えてる、茉奈ちゃんの前にいるのは僕のカノジョの榎本杏ちゃん、間違いない。
その杏ちゃんは殺し屋みたいな鋭い目をして、茉奈ちゃんにメンチを切ってる。
「それで? 言いたい事はそれだけ? 私、結構忙しいんだよね。話が無いならもういいでしょ? これで解散、また明日」
つ、強気ぃぃぃ!
茉奈ちゃんの話が本当なら、悪いのはどう考えても杏ちゃんだよ。
なのにさ、”ゴメン” の言葉もなくってさ、”これで解散、また明日” と巻き舌で言ったんだ。
…………僕の知ってる杏ちゃんじゃない、
一人称も ”杏” じゃなくて ”私” だし。
僕の前じゃあいつだって、自分のコトは名前呼び、小動物感満載で、可憐でキュートでめちゃくちゃ可愛いかったのに……え、えぇ!?
てか杏ちゃんは強気な姿勢を崩さない、今となっては茉奈ちゃんの方が泣きそうだ。
「も……なんなの……? ホント……話にならない……」
鼻をグズグズさせながら、弱気な言葉を漏らした茉奈ちゃん。
そこにすかさず杏ちゃんが、鋭利にガッツリ斬り込んできた。
「はぁぁぁ……私はただ言われたから言い返しただけなのに。こうやって泣かれたら私の方が悪者になるじゃない。ウザ、」
あぅぅ……それさっき言われてたヤツ!
杏ちゃんが茉奈ちゃんに言われてたヤツー!
形勢逆転、リバーシ完了。
茉奈ちゃんの半泣き顔がみるみる怒りで上書きされて、今にも掴みかかりそう。
理解が追いつかない、なにがどうしてこうなったのかが分からない……が、目の前で女性2人がトラブってんだ……このままにはしておけない。
怖いけど……行くか。
スリーツーワン、
心の中でカウント取って、意を決して前に出た。
僕が突然現れて、杏ちゃんも茉奈ちゃんも ビックゥッ! ってなった。
「岡村君……」←茉奈ちゃん
「英海……」←杏ちゃん
目を真ん丸に僕の名前を2人が呼んだ。
僕はというと軽く手をあげ愛想笑いを顔に乗せ、
「はは……ははは、おつかれ」
当たり障りのない言葉を発したのだ。
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