第四章 霊媒師こぼれ話_エイミーの元カノ

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え……っと……どういう事……? 一旦壁から顔を引っ込め、今見たものを頭の中で整理する。 まず……茉奈(まな)ちゃんが怒ってた。 誰に? 病休とったその日のうちに元気な姿をSNSにアップする問題児にだ。 で、その問題児が問題なんだ。 トライアゲイン。 僕はソォォォっと壁から顔を出してみた。 すると……ああ……やっぱりそうだ、見間違いじゃなかったよ。 怒りでワナワナ震えてる、茉奈(まな)ちゃんの前にいるのは僕のカノジョの榎本杏ちゃん、間違いない。 その杏ちゃんは殺し屋みたいな鋭い目をして、茉奈(まな)ちゃんにメンチを切ってる。 「それで? 言いたい事はそれだけ? 私、結構忙しいんだよね。話が無いならもういいでしょ? これで解散、また明日」 つ、強気ぃぃぃ! 茉奈(まな)ちゃんの話が本当なら、悪いのはどう考えても杏ちゃんだよ。 なのにさ、”ゴメン” の言葉もなくってさ、”これで解散、また明日” と巻き舌で言ったんだ。 …………僕の知ってる杏ちゃんじゃない、 一人称も ”杏” じゃなくて ”私” だし。 僕の前じゃあいつだって、自分のコトは名前呼び、小動物感満載で、可憐でキュートでめちゃくちゃ可愛いかったのに……え、えぇ!? てか杏ちゃんは強気な姿勢を崩さない、今となっては茉奈(まな)ちゃんの方が泣きそうだ。 「も……なんなの……? ホント……話にならない……」 鼻をグズグズさせながら、弱気な言葉を漏らした茉奈(まな)ちゃん。 そこにすかさず杏ちゃんが、鋭利にガッツリ斬り込んできた。 「はぁぁぁ……私はただ言われたから言い返しただけなのに。こうやって泣かれたら(・・・・・・・・・・)私の方が悪者になるじゃない(・・・・・・・・・・・・・)。ウザ、」 あぅぅ……それさっき言われてたヤツ! 杏ちゃんが茉奈(まな)ちゃんに言われてたヤツー! 形勢逆転、リバーシ完了。 茉奈(まな)ちゃんの半泣き顔がみるみる怒りで上書きされて、今にも掴みかかりそう。 理解が追いつかない、なにがどうしてこうなったのかが分からない……が、目の前で女性2人がトラブってんだ……このままにはしておけない。 怖いけど……行くか。 スリーツーワン、 心の中でカウント取って、意を決して前に出た。 僕が突然現れて、杏ちゃんも茉奈(まな)ちゃんも ビックゥッ! ってなった。 「岡村君……」←茉奈(まな)ちゃん 「英海(ひでみ)……」←杏ちゃん 目を真ん丸に僕の名前を2人が呼んだ。 僕はというと軽く手をあげ愛想笑いを顔に乗せ、 「はは……ははは、おつかれ」 当たり障りのない言葉を発したのだ。
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