第一章 霊媒師こぼれ話_岡村英海

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「瀧澤社長……すみませんでした。それでその……データ飛ばしたウチの営業はなんて?」 ____あぁ、なんかさ、修理の人手配するって帰っちゃったよ。いつ来るかも言わないし、携帯の番号聞いてたからかけてみたけど全然出なくてよぉ。つーか、アイツヤダ。話が通じねぇんだよ。ヘラヘラ笑って自分の言いたい事だけ言って、俺の話は聞きやしねぇ。なぁ岡村君……悪いんだけどさ、あんたが来てくれないか?  「ぼ、僕ですか?」 ____うん、岡村君に来てもらいてぇんだ。あの営業は出禁にする。二度と顔見たくねぇんだ。……ダメか? 「アドレス登録くらいなら僕でも出来ると思うけど……今は部署が違うからなぁ。上司に相談しないと……」 言いながら、同じフロアの上席を見てみると……課長も部長も話を聞いていたらしく、両手を上げて丸印を作っている。 どうやら許可は出たみたい。 んー、 「瀧澤社長、今から行くと21時は過ぎますよ? それでも良いですか?」 ゴハンとかは諦めて、すぐに出ても電車と徒歩でそれくらいはかかるだろう。 そこから作業を始めたら……下手すりゃ徹夜だな。 覚悟を決めてそう言うと、瀧澤社長はいつか聞いた子供のような弾んだ声で言ったんだ。 ____良い! 良いに決まってるよ! ありがとう! 待ってる! ご馳走と酒も用意しとくから! 「あははは、これから設定するのにお酒はダメでしょ。それに僕飲めないし。ご馳走もいらないですからね、奥様に負担をかけちゃいけません。とにかく行きます、なるべく早く行くから待っててください。それじゃあ」 話が終わってCTIの通話切断を押した。 インカムを外し、ペットボトルの水を飲む。 そして手早くパソコンを落とし、課長と部長に外出許可の書類を渡し、終わり次第直帰する旨を伝えて……僕は会社を後にしたのだ。
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