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「分かった。確かに話にならなそうだし、岡村君に預けるよ。……あのね、さっきの話。あんな事、本当は私だって言いたくないよ。でもみんなが困ってるの。休みも多いし仕事はテキトウ。岡村君が外回りから帰るたびに、仕事を抜けて会いに行っちゃう。注意をすればキレるか泣くかのどっちかだし、男性社員はそれを見て、私達が榎本さんをイジメてるって誤解する、……みんなストレスマックスだよ。だからお願い、その子どうにかして」
色々と、……それはもう山盛りの情報を僕にくれつつ、茉奈ちゃんはこの場を後にしたのだ。
……
…………
………………シン、
再び沈黙。
残された僕と杏ちゃん、2人とも黙ったままで立ち尽くしていた。
どうするか……ここでこのまま話をするか、それともどこか場所を変えるか……ん、変えた方が良いかな。
この時間なら滅多な事では人は来ない。
でも、ここが会社と言うだけでなんとなく落ち着かない。
もしかしたら、杏ちゃんは泣き出しちゃうかもしれないし。
どこかお店……と思ったが、なんてったって今日の僕は大荷物だ。
京香さんの煮物と野菜が大きな袋にパンパンで、これを持ってお店に行くのも気が引ける。
だとすると……いっその事、僕のアパートはどうだろう?
それで一緒に煮物を食べて、人目を気にせずゆっくり話す……うん、それが良い。
「杏ちゃん、」
言いかけて、それと同時にため息が重なった。
「はぁぁぁぁぁ……、」
え、ちょ、なんかすっごい重低音だよ。
こんなため息……あ、杏ちゃん? え? えぇ?
「もうさぁ、さっきのなに? 英海はさ、杏と茉奈と、どっちの味方なの? なんで怒ってくれないの? なんかガッカリしちゃった、はぁぁぁぁ……」
重低音は変わらずに、僕を見上げる杏ちゃんは……なんだかまるで、知らない人に見えたんだ。
あ、あれ……?
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