第四章 霊媒師こぼれ話_エイミーの元カノ

21/27
前へ
/370ページ
次へ
◆ ~~~5年後~~~ 「おー! 岡村、久しぶりだなぁ! 元気だったかー?」 そう言って破顔したのは五十嵐だ。 隣にはピッタリ寄り添う茉奈(まな)ちゃんもいる。 ここは都内の和風居酒屋。 お値段はちょっぴり高めの設定で、その分料理が評判だ。 予約推奨、いつでも混んでる全席個室。 今日は3人でお食事会。 前の会社の倒産依頼、数ヵ月ぶりの再会なのだ。 「岡村君、久しぶり! 仕事決まったんだって? おめでとう! なんて会社に転職したの? やっぱり職種は営業? 岡村君、営業一課のエースだったもんねぇ!」 ニコニコ笑って大きな声で。 あはは、茉奈(まな)ちゃんは相変わらず元気だな。 「2人とも久しぶり! 遅くなってごめん、連絡くれてありがとう。そうそう、やっと仕事が決まったんだ。どうにかこうにかやってるけど、研修中で右往左往しているよ。職種はね、営業でもコルセンでもないんだ。ちょっと特殊な仕事でさ、れいば……あ、うん、この話はあとでゆっくりするわ。とりあえずウーロン茶頼んでいいかな、喉カラカラなんだよね、」 僕が言うと、茉奈(まな)ちゃんがタッチパネルをポチッとしてくれ、あっという間にオーダー完了。 最近の居酒屋さんはこの手のシステム多いよね、楽でいいけど! 「岡村、なんか食べる物も頼めよ。仕事帰りで腹減ってるだろ?」 五十嵐はそう言って、タッチパネルを僕に寄こしてくれたんだ。 うん! おなかペコペコ! ガッツリ胃に溜まる物が食べたい! 「サンキュ! えっと……なに食べようかな……今、どれを見ても美味しそうだから悩んじゃうよ……」 研修よりも真面目に真剣。 メニューを端から黙読しながら、手始めに、手羽先とキュウリの漬物、フライドポテトにナスの肉巻き、ついでにピザもポチッとしといた。 「岡村君……痩せの大食いだね。いいなぁ、食べても太らないんだから。私なんて食べた分だけ太るのに」 茉奈(まな)ちゃんがプーッとほっぺを膨らまし、そう言いつつもメンチカツをペロリと食べた。 そこにすかさず五十嵐が、 「食べたって運動すれば良いんだよ」 とまぁ、”そりゃそうだ” な発言をして、茉奈(まな)ちゃんが間髪入れずに「知ってるよ!」と返してた。 「…………ぷっ! もー、2人ぜんぜん変わってないよ。懐かしいな、このやり取り。昔から仲良いもんねぇ。結婚、おめでとう。五十嵐と茉奈(まな)ちゃんなら良い家族になるよ、……って、ヤバ。30過ぎたら涙腺弱くなっちゃった。嬉しくて泣けてくる」 そうなのだ。 めでたい事に、この2人は結婚したのだ。 前の会社で同期入社の同い年。 たまには喧嘩もしてたけど、本音と本音でぶつかる2人は喧嘩のたびに絆が深くなっていた。 途中で会社が倒産しても、励まし合って乗り越えたんだ。 はぁ……僕とはえらい違いだよ。
/370ページ

最初のコメントを投稿しよう!

474人が本棚に入れています
本棚に追加