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◆
~~~5年後~~~
「おー! 岡村、久しぶりだなぁ! 元気だったかー?」
そう言って破顔したのは五十嵐だ。
隣にはピッタリ寄り添う茉奈ちゃんもいる。
ここは都内の和風居酒屋。
お値段はちょっぴり高めの設定で、その分料理が評判だ。
予約推奨、いつでも混んでる全席個室。
今日は3人でお食事会。
前の会社の倒産依頼、数ヵ月ぶりの再会なのだ。
「岡村君、久しぶり! 仕事決まったんだって? おめでとう! なんて会社に転職したの? やっぱり職種は営業? 岡村君、営業一課のエースだったもんねぇ!」
ニコニコ笑って大きな声で。
あはは、茉奈ちゃんは相変わらず元気だな。
「2人とも久しぶり! 遅くなってごめん、連絡くれてありがとう。そうそう、やっと仕事が決まったんだ。どうにかこうにかやってるけど、研修中で右往左往しているよ。職種はね、営業でもコルセンでもないんだ。ちょっと特殊な仕事でさ、れいば……あ、うん、この話はあとでゆっくりするわ。とりあえずウーロン茶頼んでいいかな、喉カラカラなんだよね、」
僕が言うと、茉奈ちゃんがタッチパネルをポチッとしてくれ、あっという間にオーダー完了。
最近の居酒屋さんはこの手のシステム多いよね、楽でいいけど!
「岡村、なんか食べる物も頼めよ。仕事帰りで腹減ってるだろ?」
五十嵐はそう言って、タッチパネルを僕に寄こしてくれたんだ。
うん! おなかペコペコ! ガッツリ胃に溜まる物が食べたい!
「サンキュ! えっと……なに食べようかな……今、どれを見ても美味しそうだから悩んじゃうよ……」
研修よりも真面目に真剣。
メニューを端から黙読しながら、手始めに、手羽先とキュウリの漬物、フライドポテトにナスの肉巻き、ついでにピザもポチッとしといた。
「岡村君……痩せの大食いだね。いいなぁ、食べても太らないんだから。私なんて食べた分だけ太るのに」
茉奈ちゃんがプーッとほっぺを膨らまし、そう言いつつもメンチカツをペロリと食べた。
そこにすかさず五十嵐が、
「食べたって運動すれば良いんだよ」
とまぁ、”そりゃそうだ” な発言をして、茉奈ちゃんが間髪入れずに「知ってるよ!」と返してた。
「…………ぷっ! もー、2人ぜんぜん変わってないよ。懐かしいな、このやり取り。昔から仲良いもんねぇ。結婚、おめでとう。五十嵐と茉奈ちゃんなら良い家族になるよ、……って、ヤバ。30過ぎたら涙腺弱くなっちゃった。嬉しくて泣けてくる」
そうなのだ。
めでたい事に、この2人は結婚したのだ。
前の会社で同期入社の同い年。
たまには喧嘩もしてたけど、本音と本音でぶつかる2人は喧嘩のたびに絆が深くなっていた。
途中で会社が倒産しても、励まし合って乗り越えたんだ。
はぁ……僕とはえらい違いだよ。
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