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「えへへ、ありがとう。それで、岡村君の方はどうなの? 新しいカノジョ、できた?(キラキラキラキラ……!)」
目を輝かしワクテカ顔で聞くのは茉奈ちゃん。
やだ……!
その質問、僕にしちゃう?
「はは……ははは……彼女なんてできないよ。それどころか好きな人すらいないし」
冷めてしまったフライドポテトをモグモグしながら言ってみた。
ん? あれれ?
なんでだろ、さっきよりショッパく感じる。
「そっかー、でもこればっかりは縁だからなぁ。そのうち良い子が現れるよ」
茉奈ちゃんは笑顔で僕にそう言ったけど……縁ねぇ。
縁って曖昧だよね、だって目には見えないし。
僕みたいな非モテ男子に縁は中々回ってこない。
そんなコトを考えてたら微妙な顔になったみたいで、2人にめっちゃ気を遣われた。
なもんで、話を変えるに持ってこいな、転職後の仕事の話をしたんだよ。
「レイバイシ!? 霊媒師ってもしかして、陰陽師的なアレのコト? え? え? えぇ?」←テンパる五十嵐、でもニヤケてる。
「ウソ! 岡村君って霊感あったの!? じゃあもしかして占いも出来るとか?」←えっと茉奈ちゃん落ち着いて、占いなんて出来ませんよ。
「「………………」」←五十嵐と茉奈ちゃん。
「……………………」←僕。
あ、あれ?
シンとなっちゃった……もしかして、引いてる?
霊媒師なんて特殊な仕事、なじみもないし、怪しいとか思われたりして。
ヤバ……伝え方、もっと考えるべきだった。
せっかくのお食事会が気まずくなったらどうしよう……と気を揉んだけど、2人のキャパは思った100倍デカかった。
「「……その話、もっと詳しく……!」」
好きなジャンルはオカルト一択、月間ム〇を定期購読する2人(そ、そうだったの!?)。
すんなりアッサリ受け入れて、あれやこれやと質問攻めにあったんだ(守秘義務に反しない範囲で回答)。
そんでもって最終的には、”営業→コルセン→霊媒師”、この職の並びに3人そろって笑ってしまい、話は脱線しながらも大いに盛り上がっていったのだ。
……
…………
………………
霊媒師の話からホラー映画にレシピの話、そして夫婦の転職先と、おしゃべりは満開でお食事会はまだまだ続く。
お酒もお茶も御馳走も、飲んで食べてと大満足なそんな時、ふと茉奈ちゃんがこんな事を言い出した。
「岡村君はさ、あれから……その、榎本さんとは連絡とってないの?」
ドキ……久しぶりにその名前を聞いたよ。
不意を突かれて心臓が早くなる。
「とってないよ。榎本さんとは5年前に別れて以来、ずっと音信不通だもの」
そう、あの日にすべてが終わってしまった。
プロポーズをしようと思ったあの日にね。
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