第四章 霊媒師こぼれ話_エイミーの元カノ

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心臓が跳ね上がる、ここに写る綺麗な女性は間違いなく杏ちゃんだ。 髪……伸ばしたんだな、色もチガウよ。 ミルクティーからコーヒー色に変わってる。 真っ白なコットンシャツにスリムなデニム、メイクも色が抑えてあって、爽やかな印象だ。 自信に溢れた表情で、でも、……でも、面影は残ってる。 目が……とても優しい目をしてるんだ。 食い入るように眺めてしまった。 恋のそれとは違うけど、胸がドキドキいっている。 僕は画面をタップして、杏ちゃんの特集を目で追った。 記事はインタビュー形式。 地元向けのローカルサイトはとてもラフな雰囲気だった。 そのラフさの中に、別れて以来、僕の知らない杏ちゃんのこれまでが書いてあった。 ____”フラワーショップenomoto” の代表を務めてます、榎本杏です。今日はなんでも聞いてください! そのかわりウチの宣伝もガンガンさせていただきますのでよろしくです! ワオ、 杏ちゃん、お花屋さんで社長さんやってるの? もしかして家業を継いだのかな? 前に言ってたよね、実家はお花屋さんだって。 お花が大好きだとも言ってたな。 ____元々は父が代表でした。小さな街のお花屋さんで、母と2人で頑張ってたんです。娘の私は好き勝手をさせてもらって、大学を卒業後、東京で就職して一人暮らしをしてました。仕事は事務職、花とは全然関係のない通信会社にいたんです。花はもちろん好きだったけど、店を継ぐ気はありませんでした(笑)。あの頃は花より恋でしたねぇ……当時付き合ってた人が、とっても素敵で夢中だったんです(照)。 え……これって僕の事だろうか……? 読んでいて顔が熱くなっていく、……でも、夢中ならあんな事言わないよね、お給料が下がるとか、ガッカリしたとか、……そういう事をさ。 疑問を胸に抱きつつ、記事を読み進めた。 しばらくはお店の話が続いてく。 街の小さなお花屋さん、杏ちゃんに代替わりをしたその後は、店舗販売だけでなく、いろんなお店やホテルを回って営業し、定期購入の契約を取って来たというのだ。 そのおかげで売り上げ高は三倍にも四倍にもなり、忙しくて嬉しい悲鳴をあげてるという。 すごいな……杏ちゃんはずっと事務職だったけど、本当は営業向きだったんだ。
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