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しっかし……置き方雑だな。
3台ともビルの敷地をはみ出しちゃってる。
コレが結構ヤバイんだよね。
見つかると(おもに警察方面の方)怒られる、下手すりゃ出すなと言われちゃう。
「しょーがないなー」
ブツブツ文句を言いながら、アタシは3台、キャスターをゴロゴロ転がし手前に引いて、敷地の中にキレイに納めた。
うん、これでダイジョブ。
そんじゃあ行きますか。
時計を見れば21時を過ぎた頃。
早くもなく遅くもない、ちょうどいい時間だ。
カツンとタイルをヒールで鳴らし、ビルに入ってすぐにある、地下に繋がる階段を降りていく。
狭くて暗くて急勾配、その階段を降りたそこには大きなドアと看板が。
【スナック★曼殊沙華】
アタシはノブに手をかけて、家のドアを開けるみたいに手前に引いた。
カランカランカラン♪
ドアベルの音がして、それと同時に、
「いらっしゃいませー!」
曼殊沙華のスタッフ達の元気な声が重なった、……んだけどさ。
来た客がアタシと分かってみんなの態度がコロッと変わった。
「なんだ弥生か。お客さんかと思ったわ」
派手なドレスとこれでもかの盛り髪で、悪態つくのは曼殊沙華のママだ。
ママはニヤニヤ笑って片眉上げて憎たらしいコトこの上ない。
「なんだじゃねぇよ合ってるわ! 客で正解!」
「あらそう。私はてっきり昼の仕事をクビになって出戻ったのかと思ったわ。え? まだクビになってない? ま、なんでも良いから早く戻ってきなさいよ。とりあえずオハヨ。よく来たわね。弥生、会いたかったわ」
悪態おかわり言いたい放題。
でもママは、アタシにタタタと駆け寄るとギュッと抱きしめ離してくれない。
ちょっと、香水つけすぎ。
バラの匂いに酔っちゃいそうよ、…………ああ、でもキライじゃない。
アタシの好きな匂いだよ。
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