第五章 霊媒師こぼれ話_大倉弥生28才の飲んだくれライフ

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「ふぅん。でもノルマがキツイんじゃない? 大丈夫? 宝石なんてそう簡単に売れる物じゃないでしょう? なんなら私が買ってあげようか?」 フォアローゼスのロックを一口、飲みながら事なさげにそう言った。 「あはは、いいって。本当に気に入ったモノがあれば買ってほしいけど、なんせ単価が高いから気軽に買って! とは言えないよ。それに、どうやらアタシは販売に向いてるみたいでさ。喋ってるとけっこうみんな買ってくれるんだよね。まだ新人だからノルマ設定低いけど、そのおかげか今月はもう達成したし心配ないよ」 へへ、チョット自慢だ。 だってさ、昼の仕事頑張ってるってママンに褒めてもらいたいじゃん。 それに気づかれないよう(あからさまだと恥ずかしいし)、アタシはフラットを装った。 ママはニヤッと笑ったあとに、 「あら優秀、さすがは弥生だわ。アンタ、曼珠沙華(ウチの店)でも売り上げ良かったものねぇ、」 言いながら店内に目線を飛ばす。 釣られてアタシもホールを見ると、目が合った常連達が、 「弥生! 酒足りてるか? 好きなだけ飲めよ!」 次々に言うもんだから、 「サンキュ! 今夜は本気出して飲むからヨロ! あとさ、ついてる女の子達にも飲ませてやれよ? 酒ばっかじゃ身体に悪いからつまみもな!」 両手を振って答えてやった。 「ふふ……アンタ、この調子で宝石も売ってるんでしょう。これなら心配なさそうね」 妖艶に微笑むママにちょっぴりドキドキ。 ママ……良い女だなぁ……御年38才。 40近いとは思えないわ、若いし美人だよ。 はぁ……アタシが38になった時、こんな風になれるだろうか? ハッキリ言って自信ないわ。 つーかさ、酒の飲み過ぎで太ったりして……あり得そうでコワイな。 38っていったら10年後か…… 10年経ったらアタシ、なにしてるんだろうな。 結婚とかするのかな?  いや……ナイナイナイナイ! 恋愛とかメンドクサイし、結婚はもっとメンドクサそうだ。 そもそもさ、こんな大酒飲みが結婚とか……あはは……絶対に無理だろ。
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