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「それで……と、相変わらず弥生は視えるのかしら、」
タバコの煙をくゆらせながら、ママがアタシにそう聞いた。
フォアローゼスは5杯目で、つまみで頼んだカラアゲは2皿目だ。
「ん? ああ、アレのコトか。ん、視えるよ(モグモグモグ)」
カラアゲにマヨネーズ、そして七味をパラパラかけて口の中に放り込む……と、ウマーーーッ!
やっぱカラアゲ最強だわ。
この世で1番ウマイ食べ物といったらカラアゲだよ。
1皿目はそのまま食べて、次は味変、マヨと七味をトッピング。
ヤバ、こんなんしたら延々イケル、何個でも食べれちゃう!
「あらそう、良かったわ。弥生に視えて私に視えないモノ、……その話を聞くのが大好きなのよ。ねぇ、今夜も聞かせてちょうだい(キラキラキラ)」
あひゃひゃ、ママの目がキラキラしだした。
ママの方こそ相変わらず、こういう話が好きだよな。
ゴージャスなママ。
豪奢な宝石、華麗なドレス、車はZに乗っている。
住んでるトコロもタワマンで、髪は毎回サロンで盛ってる。
そんなママは、なんで!? って思うけど心霊好きだ。
幽霊妖怪超常現象大好物、因果応報輪廻転生それらもガッツリ信じてる。
現代科学じゃ解明出来ない、不思議な話が大好きなんだ。
ま、そうは言っても、昔から好きだった訳じゃないんだそうだ。
店を始めてイロイロとゲン担ぎをしているうちに、横道逸れてそういうのも好きになったらしい。
でもさ、好きではあるけど霊感ゼロの緑子ママは、視えるアタシにユーレー話をせがむんだ。
テーブル越しにママはアタシに近づくと、声を潜めて囁いた。
「…………弥生、ホールの中はどう? ……いる?」
ちょっと、顔近すぎ。
薔薇の匂いと艶の唇、ウッカリドキドキしちゃったじゃんか。
腹いせにママのほっぺをつまんだ後、アタシはホールを視渡した。
ふーん、あー、ハイハイハイハイ、うじゃうじゃいるわ。
黒いのも、白いのも、男も女も両方。
「……いるね。まず1番卓に黒のリエコちゃん、隣の隣の3番卓も黒、あれは股間がモッコリしてるからシンジくんだ」
女の霊は ”リエコちゃん”、男の霊は ”シンジくん” 。
霊達の名前なんて知らないし、イチイチ ”女の霊” ”男の霊” って言うのもダルイしさ。
だから隠語を決めたんだ。
”リエコちゃん” と ”シンジくん”、ユーレーみんなこの名前。
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