第五章 霊媒師こぼれ話_大倉弥生28才の飲んだくれライフ

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「それで……と、相変わらず弥生は視えるのかしら、」 タバコの煙をくゆらせながら、ママがアタシにそう聞いた。 フォアローゼスは5杯目で、つまみで頼んだカラアゲは2皿目だ。 「ん? ああ、アレ(・・)のコトか。ん、視えるよ(モグモグモグ)」 カラアゲにマヨネーズ、そして七味をパラパラかけて口の中に放り込む……と、ウマーーーッ! やっぱカラアゲ最強だわ。 この世で1番ウマイ食べ物といったらカラアゲだよ。 1皿目はそのまま食べて、次は味変、マヨと七味をトッピング。 ヤバ、こんなんしたら延々イケル、何個でも食べれちゃう! 「あらそう、良かったわ。弥生に視えて私に視えないモノ、……その話を聞くのが大好きなのよ。ねぇ、今夜も聞かせてちょうだい(キラキラキラ)」 あひゃひゃ、ママの目がキラキラしだした。 ママの方こそ相変わらず、こういう話が好きだよな。 ゴージャスなママ。 豪奢な宝石、華麗なドレス、車はZ(ゼット)に乗っている。 住んでるトコロもタワマンで、髪は毎回サロンで盛ってる。 そんなママは、なんで!? って思うけど心霊好きだ。 幽霊妖怪超常現象大好物、因果応報輪廻転生それらもガッツリ信じてる。 現代科学じゃ解明出来ない、不思議な話が大好きなんだ。 ま、そうは言っても、昔から好きだった訳じゃないんだそうだ。 店を始めてイロイロとゲン担ぎをしているうちに、横道逸れてそういうのも好きになったらしい。 でもさ、好きではあるけど霊感ゼロの緑子ママは、視えるアタシにユーレー話をせがむんだ。 テーブル越しにママはアタシに近づくと、声を潜めて囁いた。 「…………弥生、ホールの中はどう? ……いる(・・)?」 ちょっと、顔近すぎ。 薔薇の匂いと艶の唇、ウッカリドキドキしちゃったじゃんか。 腹いせにママのほっぺをつまんだ後、アタシはホールを視渡した。 ふーん、あー、ハイハイハイハイ、うじゃうじゃいるわ。 黒いのも(・・・・)白いのも(・・・・)、男も女も両方。 「……いるね。まず1番卓に黒のリエコちゃん(・・・・・・・・)、隣の隣の3番卓も()、あれは股間がモッコリしてるからシンジくん(・・・・・)だ」 女の霊は ”リエコちゃん”、男の霊は ”シンジくん” 。 霊達の名前なんて知らないし、イチイチ ”女の霊” ”男の霊” って言うのもダルイしさ。 だから隠語を決めたんだ。 ”リエコちゃん” と ”シンジくん”、ユーレーみんなこの名前。
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