第五章 霊媒師こぼれ話_大倉弥生28才の飲んだくれライフ

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「4番卓は黒いリエコちゃんに白いシンジくんが(・・・・・・・・・・・・・・・・・)寄り添ってる、カップル(カッポー)か? ありゃあきっとワケアリだね。それからホール中央、宇宙卓には白いシンジくんが(・・・・・・・・)3人、生きてる客らと一緒に飲んでるつもりっぽいわ。あと、…………コレ、言ってもいいのかな? さっきからママの隣に白いリエコちゃん(・・・・・・・・)がいるよ」 視たままを言った。 ママは前半ワクテカ顔で、でも最後、”ママの隣にリエコちゃん” と言った途端にビクゥッ! となった。 海千山千、恐れるものなどなにもない! って感じのママのクセしてカワイイな。 アタシの手前か、ママはクールにグラスを手に取りフォアローゼスを一口飲んだ。 そして優美に微笑むと、 「そう、私の隣にリエコちゃん(・・・・・・)がいるのね。右かしら、左かしら。それと視た目はどんな感じ?」 ヨユーを装いそう聞いた。 だからアタシは、カラアゲを一口で食べてから教えてやったんだ。 「(モグモグモグ)んとね、左側。ママの隣の空いてるその席(モーグモーグ)、そこでお行儀よく座ってる。髪は長くて毛先を巻いてて、口元にはホクロが1つ。目のパッチリしたロリ顔の可愛い子だよ。アンタ名前は?」 目線をずらしてそう聞くと、リエコちゃん(・・・・・・)は『……ゆうか』と答え、それもついでに教えてやった。 聞いたママは ”ゆうか……?” と呟き少し考えおもむろに、空いてるグラスに氷を入れると酒は入れずに水を半分注ぎ込む。 そして、そのグラスを隣の席に静かに置いた。 ゆうかは驚き、出された水とママの顔をジッと視た。 指先でグラスの淵をそっと撫ぜ、しばらくしてから涙をポロポロ溢した後に、 『……ママ、ありがとう』 お礼を言って霧のように消えたんだ。 「あ…………ゆうか、消えちゃった。ママに ”ありがとう” って言ってたよ。知り合い?」 「……ええ、私の娘の1人だわ。何年か前に働いてくれた女の子。優しくて可愛くて人気があったのよ。でもね、最近病気で亡くなってね。私に……会いに来てくれたのかな」 「あぁ……そういう事か。ゆうか、真っ白で綺麗だった。ママ、安心しなよ。白い子は極楽浄土に逝けるんだ。きっと逝く前、最後に会いに来たんだよ」 「そう……今夜、弥生がいてくれて良かった。あの子、こんな仕事をしてたクセしてお酒が飲めなくてね。店が終わると ”ママ、お水が飲みたい” って甘えてたのよ。大事な娘、会いに来てくれたのね……」 ママは目を伏せ、優しく笑うとゆうかの水を時間をかけて飲み干した。 …… …………と、その時。 「こんなキツイの飲めないよ!」 突然、後ろから女の子の声がした。 振り向けば宇宙卓だ。 なんだよなんだよ、トラブル発生か!?(ワクテカァッ!)
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