第五章 霊媒師こぼれ話_大倉弥生28才の飲んだくれライフ

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桜はママに抱き着くと子供みたいに泣き出した。 ママはそれを拒否する事なく、桜の背中をサスサスしながら前ちゃんをジッと見た、……んで、端的にこう聞いた。 「前島さん、なぜ桜にテキーラの連続イッキを? 今までこんな要求、どの女の子にもしなかったのに」 前ちゃんは、……いや、佐藤クンもアワアワしてる。 ”えっとその” だの ”ゴメンナサイ” だの ”そういうつもりじゃなくってね” だのハッキリしない。 だーかーらー、”そういうつもり” じゃないんなら、”どういうつもり(・・・・・・・)” だったのか説明しろって。 ホステス全員酒に強いと思うなよ? アタシとママは規格外だと思って良い。 桜はそこそこ飲めるけど、あくまでもそこそこ(・・・・)だ。 女の子に無理をさせるな、酒は楽しく飲むモンだ。 テンパる前ちゃん&佐藤クンは、店内から注目されて大汗掻いてる。 もうさ、ぜんぶゲロっちゃえよ。 ダイジョブだ、なんか理由があるんだろう? 前ちゃん達にかぎってさ、女の子を酔わせてどうこうしないだろうし、……と静観してたら。 宇宙卓に憑いてた3霊、白いシンジくん(・・・・・・・)達まで騒ぎ出したんだ。 『あわわわわ! どうしよどうしよ!』 『前ちゃんとサトクンが怒られてるぅ!』 『だからあんな古クサイ手はダメだったんだよぉ!』 アワアワアワ!←手振り身振りで焦ってる ウロウロウロ!←宇宙卓で右往左往 真っ白でピカピカ輝く3霊は、けっこうなオッサンだった。 3人ともポロシャツ着てて、ゴルフにでも行ってきたのか? とまぁ、そんな感じで(ひと)も良さそで無害っぽい。 アワアワウロウロ、そしてアセアセ。 どうもコイツら前ちゃん達を知ってそうだし、ついでに事情も知っていそうだ。 前ちゃん達よりコッチに聞いたら早いかも。 アタシはそっと横歩きをして、シンジクン達に(って年でもないけど)近づいた。 そして、 「よぉ、オッサンら。なにテンパってんだ?」 小さく声をかけてみたんだ。 したら、 『『『 えっ!? 』』』 3霊で顔を視合わせカキーンと固まる。 いつまでたっても返事がないから、もう1度声を掛けたんだ。 「オイ、オイって! オッサンら、アタシの声は聞こえてるんだろ? コッチ向けって!」 『『『 ……え……? 』』』 2度目でやっとコッチを向いた。 オッサンらはユーレーでも視るよな目をしてアタシを視てる。 ヨーシヨシヨシヨシ! ダイジョウブ、お姉さんは白いヤツ(・・・・)には怖くないから。 刀で斬ったりしないしさ、乱暴だってモチロンしない。 だから事情、聞かせてもらおうか。
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