第五章 霊媒師こぼれ話_大倉弥生28才の飲んだくれライフ

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曼殊沙華はそんなにデカイ箱(店)じゃない。 それでもさ、ママとスタッフ、客を含めて数えたら、イチニイサンシイ……ざっと20人はいるんだよ(死者は含まず)。 その全員がアタシを見てる、スッゲェ注目浴びちゃってるぅ! 「や、えと、その…………み、みんなどうしたの? なにかあった?」 ダメ元ですっとぼけてみた。 どこまで聞こえたんだろう? アタシのデカイ笑い声? それとも、 ____へぇ、佐藤クンって桜の事が好きだったんだ、 コッチか? それによって対処の仕方が変わってくるけどドッチか分からん。 アタシ VS その他全員、腹の探り合いだ。 分からん答え。 それを教えてくれたのは当の佐藤クンだった。 額にうっすら汗を浮かべて耳まで真っ赤にさせながら、 「や、弥生さん、……なんでそのコト知ってるの?」 桜のコトをチラリと見てからそう言ったんだよ。 あらやだ素直、意外とアッサリ認めたわ。 でもってやっぱり聞こえてたのか、なんかゴメン。 佐藤クンが認めた途端、オッサン達は俄然やる気を出してきた。 『頑張れサトクン! 気持ちを伝えろ!』 『ダメで元々、上手くいったら御の字だ!』 『好きーって! 好きーって言ってぇん!』 暑苦しい応援だけど、気持ちは十分伝わってくる。 オッサンら、佐藤クンのなんなんだ? もしかして親戚かなにか? 残念ながら……佐藤クンには応援団が視えない。 それでもさ、不思議なもんでオッサンらが応援するほど、佐藤クンの表情が力強くなってくるんだ。 声も聞こえてないはずなのに。 そんな中、桜はというと……マジギレから一転。 頬を真っ赤に染めながら、モジモジソワソワ白のドレスを意味もなくコネている。 店中の視線が佐藤君と桜に移った。 みんな揃ってワクテカ4割、緊張2割。 残りはそれぞれ色んな気持ちが入り混じる。 と、ココで前ちゃんが動いた。 佐藤君の背中をバシっと叩いた後に、桜に向かって言ったんだ。 「桜ちゃん、さっきはごめんね。テキーラなんて強いお酒を勧めちゃって。みんな私が悪いんだ。佐藤君はなんにも悪くないの。本当にごめん」 桜は困惑だ、……ま、無理もないか。
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