第五章 霊媒師こぼれ話_大倉弥生28才の飲んだくれライフ

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前ちゃんの ”ゴメンナサイ” にオッサンらは慌てふためいた。 当然事情を知ってるんだろう、だからコソッと聞いてみたら…… 『まさか桜ちゃんがホントに飲むとは思わなかったんだよぉ』 『作戦だったんだ。おちょこでテキーラ、前ちゃんが無理に勧めて桜が困る。そこでサトクンが何も言わずにササッと代わりに飲み干せば、”サトクン素敵……!” ってなると思ったの』 『で、でも、桜ちゃん、間髪入れずに飲んじゃってさぁ。計画が狂って焦ってしまったんだ』 ふっる!! なに? その100年前のテンプレみたいな作戦は。 誰だよソレやろうと言い出したヤツ……って、たぶん前ちゃんだ。 だから ”みんな私が悪い” と言い出したんだ。 つーか佐藤君も佐藤君だよ。 乗っかるな、んな化石みたいな古い手に。 佐藤君は何度も首を横に振り、前ちゃんに ”すみません” と頭を下げると今度は桜に向き直る。 そして、 「桜ちゃん、」 名前を呼んだ、……途端、店の中の連中が一斉に背筋をのばした。 や、なんでおまいらが背筋を正す、なんでおまいらが緊張すんだよ。 つーか見すぎ、チョットは遠慮しろ。 ま、そんなアタシも見てるけど、ついでに言うならママもめちゃくちゃ見てるけど。 「…………な、なに?」 あーあー、桜の言い方。 可愛くねーなー。 でも、真っ赤な顔と涙目は可愛いわ。 桜、前に言ってたもんな。 ____佐藤君ってカノジョいるのかなぁ? って。 それと…… オッサンら、今イイトコだから静かにしてくれ。 気持ちはワカル、ワカルんだけど……ぷっ。 んとにもー泣きすぎだ。
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