第五章 霊媒師こぼれ話_大倉弥生28才の飲んだくれライフ

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「オイって! 教えろよー! 佐藤君とどういう関係なんだよー!」←小声 自分で言うのもなんだけど、アタシはしつこい性格なんだ。 気になっちゃって仕方がなくて、クドイくらいに聞いたんだけど、オッサン達は笑うばっかで教えてくれない、……とココで、いきなりだ。 店の中が歓声に包まれた。 ハッ! としてまわりを見れば、生きてるヤツらは拍手喝采。 みんながみんなグラスを掲げて乾杯してさ、”おめでとう” とか ”良かったね” とか嬉しそうにしてるんだ。 前ちゃんなんて泣いちゃてるし、スタッフの女の子達もおんなじだ。 そんな中、女王みたいな緑子ママは、背筋を伸ばして佐藤君の前に立つと、 「佐藤さん。桜の事、どうぞよろしくお願いします。この子は一見強そうに見えるけど、本当は繊細で傷つきやすい子なんです。大事にしてあげてください」 そう言って、深々と頭を下げた。 ちょっと待って。 アタシがさ、オッサンらと話してる間になにがあった。 なにってさっきのママのセリフ。 どう考えても佐藤君がガチ告白をして、桜がそれにOKしたってコトだよなぁ。 クッソー! 一番良いトコ見逃した! オッサンらに集中しちゃって、他の声が聞こえてなかった! 感動の告白シーン、見たかったのにっ! 後悔しても時間は元に戻せない。 腹いせに、オッサン達に文句を言おうとした時だった。 『んもー! お嬢さんのせいでサトクンの勇姿を視逃したじゃないの!』 『うまくいったってコト? 合ってる? それで合ってる?』 『見逃したけどうまくいったんだよ! これでもう思い残す事はない!』 先に文句を言われちまった! ムキー!(2回目っ!) 文句を言いたいのはアタシの方だわ! でもまぁ____ ホールの真ん中。 宇宙席には幸せそうに手を繋ぐ、佐藤君と桜の姿があった。 2人とも顔が真っ赤だ。 お互いに片想いして気持ちを中々言い出せなくて、それが今夜、ようやく気持ちが繋がったんだ。 良かったな、幸せだよな、アタシもスッゲェ嬉しいよ。
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