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ーーその日。雨と一緒に爆弾が降ってきた。
「俺……、男を好きになったかも」
「ぶっ!!??」
しとしと降りしきる六月の雨。親友の九条と並んで歩く、高校からの帰り道。
それは、いつものように下らない話題で盛り上がった会話がちょうど途切れた瞬間で。
俺は飲みかけの缶コーラを盛大に吹きこぼした。
「ちょ……、何してんの。早く拭けよ」
むせ返る俺を見て、九条がすかさずタオルを差し出してくる。
胸元を見ると制服のシャツにコーラ色のまだら模様が出来ていたが、それどころじゃない。
待って。何?今の爆弾発言。
「い、今なんて言った??」
「だから……、男を好きになったかもって。何度も言わせんな」
紺色の傘の中で、九条は整った顔を微かに赤らめている。ミルクティーみたいな色の髪が、はらりと涼し気な目にかかった。
「おかしい、かな。高木、どう思う……?」
九条は助けを求めるように俺を見つめた。
……どう思うも何も、後ろからドロップキックをくらったような衝撃にすぐには言葉が出てこない。
「……どういうことだよ……」
やっと絞り出した声は、自分でもびびるくらいテンションが低かった。
九条ははっとしたように口ごもると、引きつったような笑顔を見せる。
「あ……、やっぱり変だよな。うそ。今の無し。多分気のせい」
うん。と自分に言い聞かせるように一人頷いているが、違うんだ九条。
それを言うなら、変なのは俺の方だ。
お前の事、ずっと好きだったんだけど。
伝えるのが怖くて、今まで言えなかっただけなんだけど。
好きな女ができたというなら1万歩譲って諦めもつく。いつかはそんな日が来るだろうって覚悟もしてた。
でもさ。よりによってなんで男なの。
何しれっと他の奴好きになってんの。
俺の気持ちはどうすりゃいいんだよ。納得いかねええええ。
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